2023 Fiscal Year Annual Research Report
分子生態プロセス解析法を用いたミジンコ個体群の不安定化機構の解明
Project/Area Number |
22H02701
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
加藤 泰彦 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (60415932)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ミジンコ / 臨界減速 / マイクロコズム / 生物学的プロセス |
Outline of Annual Research Achievements |
ミジンコは、良好な環境下では、単為生殖によりメスのみを産む。一方で、個体密度の上昇や日周期の変化などの環境の変化によりオスを産むようになり、メス自体も単為生殖から有性生殖へと生殖様式を転換し耐久卵と呼ばれる休眠卵を産むことができるようになる。本研究では、ミジンコ個体群の不安定化機構を解析するために、単為生殖から有性生殖への生殖様式の転換が生じる過程において、個体群動態の変化を遺伝子レベルで明らかにすることを目的とした。マイクロコズムにおいて生殖様式の転換を誘導するための個体密度、餌の種類、給餌条件を検討し、安定して有性生殖を誘導する条件を見出した。興味深いことに、クローン個体からスタートした個体群の中で、生殖様式を切り替える個体と切り替えない個体、成長の度合いが異なる個体などが生じること見出し、遺伝的な均一なクローン個体においても個体群中で個体差が生じることが明らかとなった。 次に、単為生殖から有性生殖へ生殖様式が転換される過程において、経時的にマイクロコズムからミジンコ個体をサンプリングした。同様に、良好な環境下が維持されているためミジンコの生殖様式の転換が生じないマイクロコズムからも経時的に個体のサンプリングを行った。サンプリングした個体の遺伝子発現をRNA-Seqにより解析するために、1個体から分解を起こさずにRNAを抽出する手法を検討し、最適な手法を確立した。続いて、経時的にサンプリングした各個体から Total RNA を抽出し、受託サービスを利用して RNA-Seq を行い、各個体の遺伝子発現情報を取得することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミジンコ個体群の不安定化により生じる現象として、環境の変化による単為生殖から有性生殖への切り替え現象に焦点を当て、再現よく生殖様式の切り替えを誘導できる実験条件を見出し、さらに生殖様式が切り替わる過程での個体群中の各個体の遺伝子発現情報を取得することに成功したため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに代表者等が整理したオオミジンコの遺伝子アイソフォームの情報やゲノム情報を利用して2023年度に得られたRNA-Seqのデータを解析し、個体群が不安定化する過程で生じる各個体の遺伝子発現変化を明らかにする。一方で、個体群が不安定化している時の細胞レベルでの応答を解析するために、ミジンコ個体、もしくは組織から細胞を単離する手法を確立する。そして細胞レベルでの遺伝子発現解析を行い、個体群動態の変化の背後にある分子メカニズムの解明を目指す。
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Research Products
(8 results)