2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22H02734
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
山口 正洋 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 教授 (60313102)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷口 睦男 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 准教授 (10304677)
村田 芳博 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 助教 (40377031)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 嗅結節 / 嗅覚行動 / 適応性 / シナプス入力 / 細胞サブタイプ / 反転学習 / 神経調節因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は、マウスの「嗅結節」には匂いの誘引行動に関わる前内側ドメインと忌避行動に関わる外側ドメインが存在すること、前内側ドメインのドーパミン受容体1型発現細胞(D1細胞)の活性化が誘引的に、2型発現細胞(D2細胞)の活性化が忌避的に働くことを見出した。本研究は、マウスの嗅覚行動の高い適応性に着目し、適応性を担う神経機構を嗅結節の機能ドメインへの末梢性・中枢性シナプス入力とD1・D2細胞の機能分担に着目して明らかにすることを目的としている。 本年度は、①光遺伝学を用いて嗅球から嗅結節への末梢性シナプス入力、梨状皮質から嗅結節への中枢性シナプス入力を活性化し、えさ報酬との誘引学習、電気ショックとの忌避学習を行い、シナプス末端(軸索末端)の大きさの変化を共焦点顕微鏡にて詳細に解析した。末梢性・中枢性シナプス入力とも、軸索末端は誘引学習の際は前内側ドメイン優位に、忌避学習の際は外側ドメイン優位に大きくなることを明らかにした。②食欲促進ホルモンであるオレキシンの受容体アンタゴニストを嗅結節前内側ドメインに局所投与すると匂いに対して誘引行動をとるマウスが忌避行動をとり、その際に前内側ドメインのD2細胞が優位に活性化することを見出した。③食欲抑制ホルモンであるメラノコルチン4の受容体アゴニストを嗅結節前内側ドメインに局所投与し、匂いに対して誘引行動をとるマウスが忌避行動をとることを見出した。④マウスの嗅結節スライスを作成し、電気刺激に対する局所電場電位記録ができること、頻回電気刺激によって長期増強を起こすことを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
嗅覚行動の適応性を担う神経機構を理解するにあたり、神経調節性シグナルによる適応性の研究内容を推進し、更なる解析の基盤となる実験手法を確立できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
嗅覚行動の適応性を担う嗅結節へのシナプス入力の可塑性、嗅結節の細胞サブタイプの特性理解に向けて、次年度は以下の点を重点的に進める。 ①神経調節シグナルによる適応性の実験を更に進め、オレキシン受容体アンタゴニスト、メラノコルチン4受容体アゴニストの投与によるD1・D2細胞活性化の状態を明らかにする。また、マウスの嗅結節スライスに対してこれらの薬剤をアプライし、電気刺激による末梢性・中枢性シナプス入力の可塑性に対する神経調節シグナルの影響を明らかにする。 ②適応性のもう一つの観点である反転学習の実験を進める。光遺伝学によるシナプス入力にて誘引学習したマウスを忌避学習させ、その際の嗅結節機能ドメインの活性化の変化を行動中マウスの局所電場電位記録によって検討する。また、そのマウスの還流固定後にシナプス末端の大きさの変化を組織学的に解析する。 ③D1・D2細胞の特性についてパッチクランプ法による解析を開始する。D1・D2細胞が蛍光蛋白を発現する遺伝子改変マウスから嗅結節スライスを作成し、蛍光を指標に細胞を特定して電気記録する実験系を樹立する。
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