2022 Fiscal Year Annual Research Report
有機ニトロキシルラジカルー遷移金属協奏触媒の機能創成を機軸とする精密有機分子構築
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22H02739
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岩渕 好治 東北大学, 薬学研究科, 教授 (20211766)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹野 裕介 東北大学, 薬学研究科, 講師 (10636400)
山越 博幸 東北大学, 薬学研究科, 助教 (30596599)
長澤 翔太 東北大学, 薬学研究科, 助教 (50846425)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ハイブリッド触媒 / 酸化触媒 / 不斉合成 / フェノールカップリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「有機ニトロキシルラジカル-遷移金属協奏触媒システム」に潜在する、未踏の合成化学的機能性の開発を機軸として、常温・常圧で空気中の分子状酸素を触媒的に活性化して、①アルコールおよび②フェノールの高化学選択的酸化を基点とする高次分子変換法の創出を企図して3年間の計画研究として実施するものである。以下、項目毎に初年度の研究実績の概要を記す。 ①有機ニトロキシルラジカル-遷移金属協奏触媒によるアルコール空気酸化の効率化と合成化学的機能性付与の基盤となる多座配位型AZADOを網羅的に合成し、種々のラセミアルコールおよびvic-アミノアルコールを基質として、空気酸化的な速度論的光学分割反応における触媒構造-活性相関に関する知見を収集した。これより触媒機能を最適化するための要因を解明し、触媒設計にフィードバックして、高活性触媒の獲得を図る予定である。また、酸化的ペプチド縮合反応についての予備的検討の途上で、予期せず酸化的ペプチド切断反応が進行することを見出した。文献検索の結果、本反応は前例の無い様式であったことから、反応機構解明と有用性について検証する予定である。 ②触媒的アルコール空気酸化プロセスをフェノール基質に外挿することを企図した検討の途上に見出した、クロムサレン錯体とニトロキシルラジカルの協奏触媒系による分子内脱芳香族的フェノールカップリング反応の化学選択性と基質適用性を検討して、触媒機構の解明と不斉反応に展開するための検討を行い、本反応の優れた合成化学的特性を確認するとともに、今後の展開を先導する有用な知見を得ることができた。 上述した初年度の成果を受けて、多官能性複雑分子の効率的構築を可能とする革新的方法論を創出するとともに有機ニトロキシルラジカルと遷移金属のレドックス特性を統合する学術フロンティアの開拓を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①多様な多座配位型AZADO誘導体の合成を可能とする合成素子としてヒドロキシメチルオキサゾリン連結アザアダマンタンを設計し、その簡便な合成法を確立した。本合成素子を用いて、二座配位型、三座配位型、四座配位型AZADOを合成し、種々の銅塩共存下での第二級ラセミアルコールを基質とした空気酸化的速度論的光学分割反応の効率とエナンチオ選択性を詳細に評価した。その結果、二座配位型AZADOが最も良好なエナンチオ選択性を発現することが明らかになった。一方、四座配位型AZADOはエナンチオ選択性は中程度ながら、優れた触媒効率を発揮することを見出した。また、vic-アミノアルコールの酸化を起点とする酸化的ペプチド縮合反応について予備的検討の途上で、予期せずもペプチド基質が酸化的に切断されるという現象を見出した。本知見は、創薬化学的に有用なペプチドの新規酸化的修飾法としての展開が期待される。
②独自に見出したクロムサレン錯体とニトロキシルラジカルの協奏触媒系による分子内脱芳香族的フェノールカップリング反応の化学選択性と基質適用性を精査した。その結果、脱芳香族化するフェノールが電子豊富な基質において効率的に反応が進行することを見出すとともに、本協奏触媒系によるフェノールカップリング反応は、酸化条件に鋭敏な芳香族アミン,スルフィド,スチレン構造の共存を許容する優れた官能基許容性を有することが確認された。触媒機構を詳細に検討した結果、その活性種が四価クロムイオン錯体であることが示唆された。さらに、本反応を不斉反応に展開するべく検討を行った結果、良好な不斉収率を与えるキラルリガンドを見出すことが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に得られた知見を受けて、研究計画と内容の一部を修正しつつ、所期に掲げた目的を達成するための検討を行う。 まず、①酸化的ペプチド縮合反応の開発については、多座配位型AZADO-Cu協奏触媒によるアルコール空気酸化反応において獲得した触媒構造ー活性相関情報に基づいて、ニトロキシルラジカルと遷移金属イオンのレドックス連携のさらなる向上を目指した構造最適化を行う。合成した多座配位型AZADOから順次、アルコール基質とアミン基質共存下でのアルコール選択的な酸化を鍵とする酸化的縮合によるペプチド合成反応の効率を評価しつつ、基質適用性を拡大するための情報を収集する。また、初年度に見出した予期せぬペプチド切断反応について、酸化的ペプチド縮合反応の開発と緊密に連携しつつ新規ペプチド精密修飾法としての可能性を追究する。 一方、②触媒的空気酸化的精密フェノールカップリング反応の開発については、合成した多座配位型AZADOと種々の遷移金属イオンとのレドックス連動性を評価するべく、電子豊富な複素環を含む種々のフェノール類の酸化的カップリング反応への適用を図り、触媒効率、化学・位置およびエナンチオ選択性を精査して、有機ニトロキシルラジカル-遷移金属ー酸素分子が形成する電子伝達システムの合成化学的活用性を開発する。さらに、本触媒反応系の合成化学的機能性の追究という観点から、生合成模倣型の生物活性ヒガンバナアルカロイド骨格の構築ならびにp-アルケニルフェノール類の精密二量化反応に挑戦して、本反応の有用性の実証を目指す。 研究代表者・岩渕は本研究を統括する。分担者・笹野は多座配位型AZADO触媒反応の開発を、長澤は触媒的フェノールカップリング反応の開発を、山越は二量体天然物の全合成研究をそれぞれ担当する。また、研究室に在籍している大学院生5名、学部生4名が研究協力者として実験を担当する。
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[Journal Article] Electrochemical reactions of highly active nitroxyl radicals with thiol compounds2023
Author(s)
Masayuki Kumano, Kyoko Sugiyama, Fumiya Sato, Sachiko Komatsu, Kazuhiro Watanabe, Tetsuya Ono, Kentaro Yoshida, Yusuke Sasano, Yoshiharu Iwabuchi, Tsutomu Fujimura, Yoshitomo Kashiwagi, Katsuhiko Sato
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Journal Title
Analytical Sciences
Volume: 39
Pages: 369-374
DOI
Peer Reviewed
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