2022 Fiscal Year Annual Research Report
Total Synthesis and Drug Discovery Research of Peptidic Natural Products
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22H02740
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
土井 隆行 東北大学, 薬学研究科, 教授 (90212076)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ペプチド / 中分子 / 全合成 / 環状デプシペプチド / 細胞毒性 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞内で膜貫通型タンパク質を形成するトランスロコンチャネルに結合して阻害する環状デプシペプチド天然物デカトランシンの全合成を行なった。生合成遺伝子クラスターの情報からすべてのアミノ酸はL-体と予想し、ヒドロキシカルボン酸部位はD-, およびL-体の両方を用いて全合成を計画した。まず、特殊なアミノ酸であるN-メチルホモロイシン、ピペコリン酸、N-メチルトレオニンなどのN-アルキルアミノ酸が4つ連続するペンタペプチドの構築を検討した。3+2および2+3でペンタペプチドの合成を試みたが、いずれも縮合条件においてもエピメリ化が観測された。さらにカルボキシ末端をt-Buエステルとしていると、酸による脱保護条件でN-メチルアミド結合が加水分解されることがわかった。そこで、カルボキシ末端を2-トリメチルシリルエチルエステルとして縮合の検討を行なった。この際は、ジペプチドのアミノ末端を遊離させると分子内でラクタム化してジケトピペラジン形成が起こることがわかった。条件検討の結果、アミノ末端を塩酸塩としておき、縮合条件において塩基をゆっくり滴下することで、ジケトピペラジンの形成を回避できることを見出した。マクロラクトン構築においては、椎名法、山口法はうまく進行しなかったが、光延反応による環化に成功した。生成物の両ジアステレオマーについてNMRスペクトルの比較、細胞毒性試験(HCT-116細胞)を行った結果、(1αR)-体が天然物とよく一致したことからデカトランシンの全合成に成功し、その立体配置を決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
デカトランシンの全合成を達成し、その立体配置を絶対立体配置とともに決定することができたから。
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Strategy for Future Research Activity |
共同研究者と共に、合成した化合物を用いてトランスロコンチャネルSec61阻害の詳細な作用機序を明らかにして、他のSec61阻害薬との違いを検討し、抗がん薬としての適正を調査する。デカトランシンとSec61複合体の構造がクライオ電顕により明らかにされたことから、その三次元構造を基に高活性な化合物の設計・合成を進める。
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