2023 Fiscal Year Annual Research Report
安定分子構造の直接的な変換・官能基化を活用した革新的有機合成法の開発と展開
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22H02741
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
根本 哲宏 千葉大学, 大学院薬学研究院, 教授 (80361450)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 脱芳香化 / 安定結合活性化 / 遷移金属触媒 / 天然物合成 / ラジカル反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目となる令和5年度は以下の成果が得られた。 安定な二重結合をラジカル的に官能基化する手法として、アクリジンPNPピンサー配位子ープラチナ錯体を用いる可視光活性化型ラジカル触媒系の開発に成功した。本触媒系を用いることで、二重結合の水素移動型還元、またヒドロキシ/アルコキシアルキル化反応の開発に成功した。 銀触媒を用いるカルベン種への安定結合挿入反応としては、インドールN-H結合への不斉挿入反応の開発に成功した。銀触媒とロジウム触媒の共存下、両者が協働的に機能することで、フェニル酢酸誘導体のアルファ位にインドールユニットを高エナンチオ選択的に導入することに成功した。 また、銀カルベンによる芳香環の不斉環拡大反応を行ったのち、得られるシクロへプタトリエン体にベンザイン誘導体、ニトロソ誘導体を反応させると、[4+2]環化付加、[6+2]環化付加が、それぞれ化学選択的に進行することを見出した。DFT計算によりその化学選択性を解明した。 ドラグマシジン系天然物の合成に関しては、ドラグマシジンEの合成の進展に関しての総説を執筆するとともに、ドラグマシジンG、ドラグマシジンHの全合成にも成功した。ピラジノン環上にフッ素、臭素、ヨウ素、を位置選択的に導入した基質を合成し、チオール誘導体の導入、パラジウム触媒を用いる位置選択的なクロスカップリングを経ることで天然物骨格を構築し、官能基変換を経ることで標的天然物へと誘導した。 これらの結果に加え、銀ナイトレンを用いるC-Hアミノ化反応の開発や、可視光活性化ラジカル反応を用いるシュードインドキシル類の合成、ヒンバート型Diels-Alder反応を用いる脱芳香化、ラジカル反応を鍵工程とするクマリン系天然物の合成、ヘテロ芳香環チオフェノール類の新規合成法の開発、Fe触媒を用いる脱芳香化反応などで重要な知見を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に示したとおり、数多くのプロジェクトにおいて研究目的に沿った具体的な成果、すなわち、ラジカル過程を鍵工程とする触媒反応開発、銀カルベンを用いる不斉反応開発、ドラグマシジン系天然物の全合成など、安定分子構造を直接的に変換する分子変換法の開発に関しての成果が得られており、想定通りの研究の進捗が見られている。また、令和6年度に継続して検討するための基礎データも数多く得られており、申請書に記載の内容に止まることなく、安定分子構造の直接変換により定義される枠組みの中で、周辺領域に派生する幅広い研究展開を実現している。これらの状況に鑑みても、当初の計画以上に進展しているとの評価が適切だと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
銀ナイトレンを用いるC-Hアミノ化反応の開発、可視光活性化ラジカル反応を用いるシュードインドキシル類の合成、ヒンバート型Diels-Alder反応を用いる脱芳香化、ラジカル反応を鍵工程とするクマリン系天然物の合成、ヘテロ芳香環チオフェノール類の新規合成法の開発、Fe触媒を用いる脱芳香化反応に関して、現在得られている成果をまとめて論文化する。ドラグマシジン類の合成、ポリフェノール系天然物の合成、3,4位中員環縮環インドール類の合成に関しても、骨格合成法の開発と標的天然物の合成を両輪に、化学系薬学の見地から多角的な研究を進める。
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