2022 Fiscal Year Annual Research Report
Structural analysis and drug development of GPCRs
Project/Area Number |
22H02751
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
志甫谷 渉 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (30809421)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | GPCR / Cryo-EM / 構造生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はLPAの安定なアナログであるONO-0740556を開発し、ヒトLPA1受容体に対してEC50値0.26 nMのアゴニスト活性を示した。そしてクライオ電子顕微鏡法を用いて、ONO-074556が結合したhuman LPA1-Gi複合体構造を3.5オングストローム分解能で決定した。ONO-0740556の構造は、オルソステリックサイト内で明確に観察された。アゴニスト結合部位はは、細胞外側の極性認識領域と膜貫通領域内の疎水性ポケットからなる。ONO-0740556の頭部リン酸およびグリセロール部位は極性認識部位に位置し、長いアシル鎖は曲がった状態で膜貫通ポケットに収まり、受容体と広範な疎水性相互作用を形成していた。 我々はLPA1受容体の活性化機構についてアゴニスト結合の活性状態とアンタゴニスト結合の不活性状態の構造を比較した結果、その過程で細胞内側の膜貫通ヘリックスの移動が明らかになった。また、正電荷を持つアミノ酸残基がアンタゴニストとアゴニスト両方の負電荷を同様に認識し、受容体の活性化に必要なモチーフの再編成が起こることがわかった。さらに、ONO-0740556という化合物がLPA1に結合することで引き起こされる構造変化を調べた結果、細胞内側にGタンパク質を認識するための空洞が形成され、Gタンパク質との結合が確認できた。詳細な比較検討の結果、LPA1-Gi複合体におけるGiタンパク質の位置が他のGPCR-Gi複合体と異なることが明らかになった。。さらに、LPA1とGiのアライメントに基づいた3次元分類を行い、4つの異なる構造を同定した。これらの構造から、受容体とGタンパク質の相互作用が弱まる過程が示され、GTP結合に伴う受容体とGタンパク質の解離過程が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
LPA1-GiとLPAアナログONO-0740556を結合させた複合体の構造を決定し、頭部リン酸の強固な認識と曲がったアシル鎖が球状ポケットに収容されていることを明らかにできた。活性型と不活性型のLPA1の構造を精査した結果、受容体の活性化には2つの因子が協調して重要な役割を果たしていることが明らかになった。一つはTM7によるリン酸基とグリセロール骨格の認識、もう一つはポケット底部の残基による長いアシル鎖との疎水性相互作用である。TM7によるリガンド認識は、S1P3よりもLPA1の方がリガンドがTM7に近く、疎水性ポケットがTM7に拡大しているという結合モジュールの性質と一致する。これは、現在報告されているリゾリン脂質受容体の構造の中で、LPA1に特有のものである。結合部位では、アンタゴニストはそのメトキシカルボニル基とインダンによって、TM7の内向きの動きを妨げ、受容体の活性化を阻害する。さらに、ポケットの底部では、ジメトキシフェニルの位置が、受容体の活性化に必須なL132とL297と衝突する。この観察から、アンタゴニストはL132とL297が活性化に向かうのを阻害していることがわかった。これらの成果をNature communicationに発表することができたため、当初の計画以上に進展していると言える。他にも、複数種類のGPCR-G複合体の構造解析に成功し、論文投稿を予定している。
|
Strategy for Future Research Activity |
b3アドレナリン受容体 (b3AR) は、ノルアドレナリンを受容し、脂肪細胞における脂肪分解および消化器官の平滑筋弛緩を担う。膀胱における排尿筋弛緩に大きく関与することから、b3選択的作動薬ミラベグロンが過活動膀胱に対する治療薬になっている。 b1-3受容体へのサブタイプ選択性は副作用に直結しており、ミラベグロンによるb1の活性化は心不全リスクがあるため、より選択性の高い薬剤が求められている。我々は既にイヌ由来b3ARとGs蛋白質の複合体構造を報告しており、狭い細胞外ポケットが b3選択性に重要であることが示唆されている。ミラベグロン以外にも、副作用の低減したビベグロンを含め分子構造が大きく異なるb3選択的作動薬が複数存在するそうした薬剤とb3AR-Gsとの複合体構造を網羅的に解析し変異体実験や分子動力学解析を行い、薬剤のb3AR選択性を詳細に解する。 リゾフォスファチジルセリン (LysoPS)はリゾリン質の一種であり,LysoPSを受容するGPCRは3種類存在し(LPS1-3) マスト細胞の脱顆粒を促進する作用の他,神経細胞の突起伸長促進,T細胞の活性化抑制,細胞遊走などの作用が知られている。特にLPS1作動薬投与では腫瘍サイズが縮小することやLPS1 KOマウスでは担がんの腫瘍サイズが増大することから LPS1作動薬は抗がん剤としての可能性がある。 LPS1は他のリゾリン脂質受容体と異なりGiのみを選択的に活性化する。既にLPS1 選択的LysoPSが結合したLPS1-Gi複合体の 3.4A分解能の構造解析に成功しており構造情報およびそれに基づいた変異体実験によってリガンド認識機構を解明し受容体活性化機構を解明する。
|
Research Products
(2 results)