2022 Fiscal Year Annual Research Report
エクソソームと受容細胞エンドソームとの膜融合機構を導入した人工エクソソーム創製
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22H02754
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
加藤 くみ子 北里大学, 薬学部, 教授 (10398901)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 細胞外小胞 / エクソソーム / リポソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、エクソソームを含む細胞外小胞の効率的な細胞質送達効率に着目し、エンドソーム膜との膜融合に必須となる、エクソソームを含む細胞外小胞の構成因子を明らかにするとともに、そのエッセンスを導入した人工エクソソームを創製することを目的としている。本年度は、エクソソームとエンドソーム膜との膜融合を評価できるシステムを構築した。受容細胞へのエンドサイトーシス以降の、エンドソームとの膜融合現象に焦点を当てるため、まずは無細胞系で解析を進めた。エンドソームはライソゾームへの成熟に伴い弱酸性環境になる。エンドソーム膜は、ライソゾームに成熟するまでの過程で脂質組成がダイナミックに変わることが知られており、コレステロールの減少、セラミドの増加、酸性脂質であるリゾビスフォスファチジン酸(BMP)の増加など、細胞膜とは異なる性質を有している。本研究課題では、これらの点に着目し、エンドソームのモデルであり、確実にエクソソームとの膜融合が検出可能なFRETリポソームを作製した。ヒト肝癌由来細胞株(HepG2細胞)培養液から回収・精製したエクソソームを用い、FRETリポソームで用いる脂質の検討、粒子径、エクソソームとの混合比等を検討し膜融合能が最大となるように最適化した。pHが弱酸性下の方が中性下より膜融合能は大きく、生理的環境を反映していた。最適化したFRETリポソームは、エンドソームの主要な膜構成脂質と同様の脂質組成を有していた。また、エクソソームを模倣したモデルリポソームとエクソソームとの膜融合能を比較したところ、エクソソームの方が人工のモデルリポソームより膜融合能が大きかった。以上より、創製したFRETリポソームは、今後エクソソームの膜融合機構を精査する目的に適したものであると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エクソソームを含む細胞外小胞とエンドソームとの膜融合の機構を解明するために、FRET現象を取り入れたエンドソームモデルリポソームを作製することができた。創製したFRETリポソームはエンドソーム膜を構成する主要な脂質と同様の脂質組成を有していた。また、エクソソームを模倣したリポソームと細胞培養液から精製したエクソソームとで膜融合能を比較したところ、エクソソームの方が人工のモデルリポソームより膜融合能が大きかった。従って、本年度構築したFRETリポソームはエクソソームとエンドソームとの膜融合機構を精査する目的に適ったものであると考えられる。このように、本研究の目的を遂行するための研究が順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
作製したエンドソームモデル小胞を用いた膜融合アッセイ系、及び細胞培養液から回収・精製したエクソソームを用い、膜融合においてエクソソーム由来タンパク質が関与する可能性を精査する。また、種々の緩衝液等を用いてエクソソームの物理化学的特性を測定し、物理化学的特性が膜融合へ与える影響について精査する。
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