2022 Fiscal Year Annual Research Report
Diversity and function of very-long-chain fatty acids in biobarrier formation
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22H02757
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐々 貴之 北海道大学, 薬学研究院, 准教授 (20342793)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 脂肪酸 / セラミド / 口腔粘膜 / バリア |
Outline of Annual Research Achievements |
野生型マウスの口腔粘膜(頬、舌)と消化管(食道、胃、小腸、大腸)の包括的なセラミドプロファイリングを行い、アシルセラミドと結合型セラミドが口腔粘膜と食道、胃に存在することを明らかにした。これらの組織・臓器には表皮と同じ重層扁平上皮が含まれることから(マウスでは胃の一部の前胃が重層扁平上皮からなる)、アシルセラミドと結合型セラミドが重層扁平上皮で合成されることが示唆された。その他のセラミドクラスについて組織・臓器によって存在量が異なることを明らかにした。 涙液バリアを形成するマイバム脂質について、野生型マウスマイバム脂質中にコレステリルエステル以外にデスモステロールと7-デヒドロコレステロールからなるステリルエステルが存在することを明らかにした。 ELOVL1遺伝子に潜性変異をもつ先天性魚鱗癬患者の角質層のセラミドプロファイリングを行い、脂肪酸が短鎖化していることを明らかにした。短鎖化とそれに伴うアシルセラミド量の減少が魚鱗癬発症に関わることが示唆された。また、ALDH3A2遺伝子に変異をもつ魚鱗癬患者(シェーグレンラルソン症候群)のセラミドプロファイリングにより、脂肪酸の短鎖化を見出した。 CreERT2マウスとElovl1 floxマウスを交配し、タモキシフェン誘導型Elovl1 KOマウスを得た。表皮におけるKO効率はタモキシフェン投与5日後で80%であり、その後は若干の増加を示した。KO効率は臓器によって異なり、約15%から80%であった。 脂肪酸伸長酵素ELOVL4の顕性変異(ミスセンス変異)は指定難病の脊髄小脳変性症34型を引き起こす。構造予測から、変異残基はELOVL4に結合した脂肪酸の末端近傍に存在することが推定された。変異はELOVL4の伸長可能鎖長を減少させ、神経細胞においてホスファチジルコリンに含まれる多価不飽和脂肪酸の短鎖化を引き起こすことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に示した内容について、予定していた検討・解析をおおむね行うことができた。タモキシフェン誘導型Elovl1 KOマウスの作製に成功するなど、重要な進展があった。解析を終えた魚鱗癬患者の研究成果は論文として報告した。また、別の脂肪酸伸長酵素ELOVL4の解析も進め、ELOVL4変異によって引き起こされる脊髄小脳変性症の分子機構の解明と論文報告に至った。 以上の点から、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
口腔粘膜のセラミドプロファイル解析について、野生型マウスおよびElovl1欠損マウスにおける口腔粘膜のセラミドプロファイル解析を完結させる。ヒト健常者口腔粘膜のセラミドプロファイルの解析を行う。 マイバム脂質中のステリルエステル多様性について、ヒトの涙液についても調べる。コレステリルエステル合成酵素Soat1のKOマウスのマイバム脂質を測定し、多様なステリルエステル産生へのSoat1の関与を調べる。 タモキシフェン誘導型Elovl1 KOマウスについて、タモキシフェン誘導後の表皮のセラミドプロファイルおよびバリア機能の経時変化を調べる。 先天性魚鱗癬患者で報告された顕性のELOVL1点変異について、変異残基をさまざまなアミノ酸に置換した変異体を作製し、酵素活性を評価する。 タモキシフェン誘導型Elovl1 KOマウスへのアシルセラミドの塗布によるバリア機能の回復について、アシルセラミドの化学合成体の提供に関する共同研究者との調整およびマウスへのアシルセラミド塗布に関して溶媒や塗布頻度の条件検討を行う。
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Remarks |
北海道大学大学院薬学研究院生化学研究室 http://www.pharm.hokudai.ac.jp/seika/index.html
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Research Products
(7 results)