2022 Fiscal Year Annual Research Report
自然免疫受容体TollとGyc76Cのリガンドアイソフォームの発現による免疫調節
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22H02758
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
倉田 祥一朗 東北大学, 薬学研究科, 教授 (90221944)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ショウジョウバエ / NF-κB経路 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、研究代表者が、新規自然免疫受容体による新たな免疫調節機構の存在を見出したため、この機構の解明を目的とする。NF-κB経路は、自然免疫を制御する中心的なシグナル伝達系である。研究代表者は、新たにショウジョウバエにおいて、NF-κB経路を制御する受容体Gyc76Cを同定した(iScience 2021)。さらに、NF-κB経路を制御している二つの受容体、Gyc76CとToll受容体は、それぞれ単独でNF-κB経路を活性化するが、両者が同時に活性化されると、はるかに強い応答が誘導されることを明らかにした。多数のアイソフォームが存在するSpz前駆体は、全て同様にToll受容体のリガンドである活性化型Spzを生じるが、Gyc76C の活性化に変わるSpz N末端に多様性を示す。本研究では、多数のアイソフォームを持つSpz前駆体が、二つの受容体を介して免疫応答を調節する、新規機構を解明する。 今年度は、感染後の時間経過に伴い見られる免疫調節と、自然免疫における免疫記憶(訓練効果)で見られる免疫調節に着目し、免疫調節時におけるSpz前駆体アイソフォームの発現状況を解析した。その結果、自然免疫における免疫記憶における免疫調節時には、Spz前駆体アイソフォームの発現状況に大きな変化は認められなかったが、感染に伴う免疫調節時には、感染させる菌の種類によって発現するアイソフォームが異なることが示され、菌種特異的にSpz アイソフォームの発現が制御されている可能性が示唆された。また、菌感染時の発現変動が同じパターンを示すアイソフォームではエクソンのパターンに共通性が見られたことから、Spz アイソフォームの発現制御が選択的スプライシングの制御を介して行われている可能性を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
感染時に、菌種特異的にSpz アイソフォームの発現が異なることが示され、また、菌感染時の発現変動が同じパターンを示すアイソフォームではエクソンのパターンに共通性が見られることが判明した。異なる役割を有するSpzアイソフォームが存在する可能性が示唆されたため、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、おおむね順調に進展していることから、当初の研究計画に従って、個別のSpz前駆体アイソフォームのNF-κBシグナル活性化能を調べる。すでに、Spz-RA、-RB、-RM、-RNアイソフォームが、異なるNF-κB活性化能を示すことを明らかにしているが、残りのアイソフォームについても同様に解析を進める。すなわち、内因性のSpzの影響を排除するために、内因性のSpz前駆体が切断されない変異体(Spzrm7変異体)において、個別のアイソフォームを単独で発現させる。同時に、感染時に活性化するModSPセリンプロテアーゼを発現することで、Spz前駆体を切断し、Toll受容体のリガンドである活性化型Spzと、Gyc76CのリガンドであるSpz N末端を産生させる。その際のNF-κBシグナルの活性化を、抗菌ペプチドDrosomycinの発現量として定量する。一方で、Gyc76Cの活性化をcGMP産生量として定量する。これにより、個別のSpz前駆体アイソフォームが示すNF-κB活性化能と、Gyc76C活性化能を明らかにする。
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Research Products
(10 results)