2022 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of multilayered cellular responses to osmotic environment and functions of the response in macrophages
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22H02761
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
名黒 功 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 准教授 (80401222)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 浸透圧 / ASK3 / NFAT5 / 細胞代謝 / マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は研究計画に従って以下の項目について解析しデータを得た。 (1)ASK3を介する浸透圧感知とシグナル伝達の解析。これまでの解析からASK3の高浸透圧応答性には液-液相分離による液滴の形成が必要であることを明らかにしている。今回新たにTRPM4チャネルを介したNaイオン流入もASK3液滴の流動性維持に必要であることを発見するとともに、ASK3以外の分子も細胞内Na濃度によって液滴の物性を変化させることを突き止めた。これにより高浸透圧の感知とシグナル伝達における新たな分子機構の提唱に至った。 (2)新たなシグナル経路によるNFAT5の転写活性制御。我々は、NFAT5の高浸透圧依存的な核内移行を指標としたゲノムワイドsiRNAスクリーニングによりこれまで関与が知られていないシグナル伝達経路の分子がNFAT5の機能を制御することを突き止めている。本年度は、このシグナル伝達経路の複数の上流因子のうちどれがNFAT5の制御に関与するか明らかにした。また、同定した制御分子のマクロファージ特異的ノックアウトマウスを導入し、このマウスの腹腔マクロファージは高浸透圧応答において欠陥があることを明らかにした。 (3)浸透圧ストレスで変化する糖代謝の解析。我々は、高浸透圧刺激でPDKの活性が上昇し、糖代謝が急激にOXPHOSから好気解糖にシフトすることを明らかにしている。本年度、このPDK活性化のメカニズムについて、既知のタンパク質リン酸化経路や、アロステリック効果を与える複数の代謝物の関与を検討したが、どの経路の関与も認められず、高浸透圧においては新たなPDKの制御機構があることが示唆された。また、高浸透圧ストレス後に数分で起こる糖代謝のシフトとPDHのリン酸化は少なくとも8時間は持続することを確かめ、細胞代謝に長期的に大きな影響を与えることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、計画にある3つの主要な柱であるASK3、NFAT5、細胞代謝のそれぞれについて、研究実績にあげた新たな知見が得られた。これらの知見は、今後マクロファージの機能と浸透圧環境の関係について解析を進めるにあたり重要な手がかりとなる。また、各項目それぞれについて論文投稿も行っており、細胞代謝の項目については今年度に出版された。今後必要となるマクロファージを単離するための遺伝子改変マウスの導入や繁殖、実験技術の習得も滞りなく進んでおり、来年度以降の研究の準備も順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、各項目に関する推進方策は以下のように進める。 (1)ASK3を介する浸透圧感知とシグナル伝達の解析。今年度新たに細胞内Naが様々なタンパク質分子の液-液相分離に重要であることを明らかにしたため、この機構のタンパク質凝集制御への関与を検討する。保有しているASK3ノックアウトマウスよりマクロファージを単離して、浸透圧刺激に対する応答性の違いを検討することで、ASK3を介する浸透圧感知の重要性を解明する。 (2)新たなシグナル経路によるNFAT5の転写活性制御。新たに発見したNFAT5制御分子が高浸透圧刺激時のマクロファージの遺伝子発現に影響を与えることが確かめられつつあるため、より範囲を広げてRNA-Seqなどを活用して網羅的に遺伝子発現プロファイルを検討してこの分子の重要性を明らかにする。また、この分子がどのようにしてNFAT5の活性を制御するのか分子機構についても解析を進める。 (3)浸透圧ストレスで変化する糖代謝の解析。高浸透圧で起こる細胞代謝の変化の重要性を解析するため、阻害剤などでPDKの活性を抑制した際のマクロファージの応答について解析を進める。また、本年度の解析から研究実績にも記載した新たなPDKの制御機構の存在が示唆されるため、ゲノムワイドsiRNAスクリーニングなどアンバイアスな手法でこの制御機構の分子基盤について明らかにする。
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