2022 Fiscal Year Annual Research Report
加齢に伴うタンパク質の構造・機能変化とその病理学的役割の解明
Project/Area Number |
22H02768
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
古川 良明 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (40415287)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | スーパーオキシドディスムターゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
変異型の銅・亜鉛スーパーオキシドディスムターゼ(SOD1)は家族性の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病因タンパク質であり、運動ニューロンにおいて凝集し封入体を形成することが知られている。SOD1の凝集メカニズムについては多くの研究がなされているものの、いまだに解明がなされていない。本課題では、ALSが加齢性疾患の一つであり酸化ストレスの亢進が報告されていることに着目し、酸化的環境におけるSOD1の構造変化を明らかにすることで、ALSにおけるSOD1凝集の病理学的役割について理解することを目的としている。実際、ALS患者の脳脊髄液に含まれるSOD1は、タンパク質表面に露出しているCys111の側鎖が酸化されていることを報告してきた。そこで本年度には、SOD1に過酸化水素を添加することによって、Cys111の酸化を試験管内で再現することを試み、Cys111の酸化がSOD1の構造に及ぼす影響について検討を進めた。まず、高濃度の過酸化水素を添加することによって、Cys111の側鎖がスルフェン酸・スルホン酸に酸化されることを質量分析によって明らかにした。また、Cys111の側鎖がスルフェン酸に酸化されたSOD1を模倣したC111D変異型SOD1を作製し、熱安定性や亜鉛イオンとの結合親和性について評価した。特に、C111D変異によってSOD1の熱安定性が若干ではあるが低下することがわかったものの、生理的温度においてタンパク質のミスフォールディングが引き起こされるほどの安定性低下ではなかった。しかし、過酸化水素で酸化したSOD1は疎水性度が増大しており、変性していることが示唆されたことから、酸化によるSOD1の変性メカニズムについてさらに検討を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、ALSを含めたいくつかの神経変性疾患患者に由来する脳脊髄液を解析し、一部の検体から酸化型SOD1と考えられる異常タンパク質を検出している。それらの結果に基づいて、SOD1のミスフォールディング・構造異常化は酸化が引き金となっているのではないかと考えている。本課題では、過酸化水素によってSOD1を酸化し、酸化型SOD1の構造・機能的特徴について検討を進めることができている。
|
Strategy for Future Research Activity |
ALSの原因となる病因性変異を有したSOD1についても検討を行い、SOD1の酸化されやすさや、酸化されうるアミノ酸残基などが変異によって変化するのかを明らかにする。また、SOD1が酸化されることによって、結合している銅イオンや亜鉛イオンとの親和性に影響が及ぶのかについても検討をすすめる。
|