2022 Fiscal Year Annual Research Report
合成生物学的手法を基盤とする活性天然物の構造展開研究
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22H02775
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
浅井 禎吾 東北大学, 薬学研究科, 教授 (60572310)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 天然物 / 生合成 / 合成生物学 / ゲノムマイニング |
Outline of Annual Research Achievements |
モデル糸状菌である麹菌を宿主として、糸状菌と植物など異なる種の生合成経路を融合することで、多様な非天然型天然物の創製を目的として、麹菌での植物天然物の生合成経路の確立を目指した。バッタから分離したDisocosia属糸状菌のゲノム上に非リボソーム型ペプチド合成酵素のアデニル化ドメイン (Aドメイン) とペプチドキャリアタンパクドメイン (PCPドメイン) を有するユニークなポリケタイド合成酵素遺伝子diapAを見出し、機能解析を実施した。その結果、diapAは世界で初めてとなるIII型ポリケタイド合成酵素以外となるカルコン合成酵素であることを明らかにした。また、糸状菌では初となるカルコン合成酵素の発見に成功した。カルコンは植物のフラボノイドの共通前駆体であり、植物ではカルコン異性化酵素により2S-ナリンゲニンになったのちに多様なフラボノイド経路へと分岐する。そこで、本発見に基づいて、糸状菌内で、フラボノイド類の生合成プラットフォームを構築することとした。麹菌にdiapAを発現した形質転換株では、カルコンの生産が微量であり、開始基質であるp-ヒドロキシ安息香酸を添加すると生産量が増大した。麹菌内では、p-クマル酸からp-ヒドロキシ安息香酸への代謝経路が知られているものの、チロシンからp-クマル酸へ変換するチロシンアンモニアリアーゼ (TAL)が存在していない。そこで、酵母由来のTALを麹菌に導入し、開始基質をin vivoで供給する経路を構築することとした。すなわち、カルコン合成酵素遺伝子diapA、酵母由来TAL遺伝子および植物由来カルコン異性化酵素遺伝子を麹菌で今日発現した。その結果、植物フラボノイドの共通前駆体である2S-ナリンゲニンを選択的に生合成することに成功した。本成果は、植物および糸状菌経路を融合したフラボノイド創製のプラットフォームとなり得る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画では明らかにしていなかった、糸状菌カルコン合成酵素の発見および機能解析を達成した。その成果に基づき、麹菌を宿主として、植物フラボノイドの共通前駆体である2S-ナリンゲニンのde novo生産に成功した。この結果により、本生産系をプラットフォームとして様々な糸状菌もしくは植物遺伝子を組み合わせて発現させることで、非天然型フラボノイドの生産が期待される。当初計画に加えて、新たな経路の確立ができた点で、計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに達成したフラボノイド生産プラットフォームを活用することで、非天然型フラボノイド類の創製を目指す。まず、フラボノイド生産のツールとなり得る修飾酵素遺伝子の知見を得ることを目的として、糸状菌で唯一報告されているフラボン天然物であるクロロフラボニンについて、詳細な生合成経路の解析、各酵素の反応機構および基質特異性を明らかにする。 また、キメラ経路の構築のプラットフォームにするべく、麹菌を宿主としてETP類および糸状菌有用ジテルペンの生合成の再構築を実施する。
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Research Products
(13 results)