2022 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト脳マイクロパソフィジオロジカルシステムズ:脳疾患の生体模倣と創薬研究への応用
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22H02791
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
降幡 知巳 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (80401008)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
枡田 大生 千葉大学, 大学院医学研究院, 助教 (10722936)
高山 祐三 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (60608438)
森尾 花恵 東京薬科大学, 薬学部, 助教 (70908524)
小島 伸彦 横浜市立大学, 理学部, 准教授 (90342956)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 生体模倣システム / In vitro model / Drug screening / 血液脳関門 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、脳疾患を再現する新たな三次元型ヒトモデル「ヒト脳Micro-Patho-Physiological Systems」を創成すること、さらに病態機序解析や薬効解析を通じて、創薬研究におけるそれらの有用性・実装性までを実証することを目的としている。具体的な対象疾患はグリオーマ、多発性硬化症、パーキンソン病である。 初年度は、各病態モデルを構築するための基盤条件の検討を行った。まずグリオーマモデルでは、U87、U251、AM-38、ccf-sttgの4種のグリオーマ細胞と脳毛細血管内皮細胞を共培養し、それぞれの血液脳腫瘍関門機能を検討した。その結果、関門機能は全ての共培養モデルにおいて一様ではなく、差異が認められた。したがって、用いるグリオーマ細胞の特性に応じて異なる特徴を有するモデルを構築することができると考えられた。 多発性硬化症モデルの構築に向け、まず脳毛細血管内皮細胞の炎症応答性を解析した。その結果、炎症性サイトカイン曝露下で免疫細胞モデルであるTHP-1細胞とJurkat細胞の脳毛細血管内皮細胞への接着が亢進することが明らかとなった。 パーキンソン病モデルの構築に向け、ヒト不死化アストロサイトとドパミン神経由来LUHMES細胞との共培養法の構築と検証を行った。その結果、アストロサイトとの共培養によりLUHMES細胞の成熟化が促進した。さらにアストロサイトとの共培養時にのみ、炎症性サイトカイン曝露による神経障害が認められた。 以上について、学会発表を行った。これら結果により、各モデル構築における基本的な知見を得ることが出来たことから、次年度は各病態に応じた検討を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
それぞれのモデル構築における基本的な方法や条件の確立を進め、学会発表を行う段階まで進めることが出来たため。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度見出した条件に基づいて対象とする各病態モデルを構築し、それぞれにおける病態を以下のような観点で解析する。 グリオーマ:異なる特性を持つグリオーマモデルを構築し、それらモデル内でのグリオーマ細胞の増殖や浸潤の観察を行う。また、抗がん剤への応答性を検証する。 多発性硬化症:スフェロイドBBBモデルを構築し、炎症反応条件下で免疫細胞の浸潤を解析する。また、それを阻害する薬剤候補の検証を進める。さらに、免疫細胞の浸潤では糖鎖が影響を及ぼすと考えられていることから、血液脳関門細胞における糖鎖の解析も試みる。 パーキンソン病:蛍光標識したLUHMES細胞を作成し、スフェロイド脳モデルを構築する。その上で炎症性サイトカインやMPTPを用いてパーキンソン病モデルとする。細胞の形態観察や細胞死の観察を進めるとともに、神経細胞障害を生じうるアストロサイト因子を明らかとする。 また、完全な脳MPPSの構築を待たずとも、昨年度研究より得られた結果とあわせて、順次論文化を進め、積極的な成果公開に努める予定である。
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