2023 Fiscal Year Annual Research Report
イベリアトゲイモリが示す新規の細胞周期制御機構と強力な再生能力との関係を解明する
Project/Area Number |
22H02796
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
林 利憲 広島大学, 両生類研究センター, 教授 (60580925)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荻野 肇 広島大学, 両生類研究センター, 教授 (10273856)
古野 伸明 広島大学, 両生類研究センター, 准教授 (80219120)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | CDK1 / イベリアトゲイモリ / 細胞周期 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、研究代表者みずからがモデル動物として確立したイベリアトゲイモリを用いて、再生における細胞増殖の制御機構を解明することを目指すものである。特にイモリや両生類特有の細胞周期の進行機構が存在する可能性に着目して、再生時のcyclinやCDKの機能の詳細を解明することを目指す。当該年度昨年に引き続き、以下の2項目を実施した。 (1)イモリに見られるCDK1に依存しない細胞周期の進行機構の証明に取り組み、CDK1ノックアウトイモリの個体レベルでの細胞増殖と、細胞分裂のパターンを解析した。KOイモリの結合組織細胞を培養する方法により、細胞分裂のパターンの解析を実施した。 (2)イモリにおいて恒常的に発現するcyclin D遺伝子の働きについて、骨格筋の分化と成熟に焦点を当てて解析した。cyclin D1ノックアウトイモリでは、成長に遅れが見られたが、特に骨格筋形成の遅滞が顕著であった。そこで、骨格筋の元となる筋芽細胞の抗体染色を行い、野生型個体との比較を行った。この結果、ノックアウトイモリでは筋分化に関係する遺伝子の発現に変化が起きていることを見出した。さらに、3種類あるcyclin D遺伝子のうち、cyclin D1とD2のノックアウトイモリを用いた四肢の再生実験を行い、それぞれの遺伝子の再生における機能を解析した。少なくとも単独のノックアウトでは四肢再生に顕著な影響が現れないことがわかった。 心臓再生手術の標準プロトコールとなる論文を国際科学雑誌にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、CDK1ノックアウトイモリの細胞増殖に対して、どのような影響が生じているのかを詳細に解析することができた。また、cyclin D1ノックアウトイモリにおいて、成長に遅れが見られる原因の1つである骨格筋形成の遅滞の原因となる遺伝子の候補を得た。さらに、cyclin D1、またはcyclin D2のノックアウトが四肢再生に与える影響を明らかにすることができた。 加えて、関連する論文1報を発表できた他、関連する研究について4件の学会発表を行うことができた。これらのことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も引き続き(1)イモリに見られるCDK1に依存しない細胞周期の進行(2)イモリにおいて恒常的に発現するcyclin D遺伝子の働きの解明を進める。年度の後半からは、国際科学雑誌への投稿に向けて得られた結果を取りまとめる。 加えて、(3)研究分担者と共にツメガエルにおける研究を進めていくことで、イモリで見られている現象について、他の動物にも一般化できるか否かの検証を行う。 今年度中に得られる結果についても、日本発生生物学会や分子生物学会で積極的に発表していく。
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