2022 Fiscal Year Annual Research Report
神経病原性蛋白質オリゴマーの神経毒性を抑制する分子メカニズム
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22H02829
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
藤井 雅寛 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30183099)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 成人 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳・神経科学研究分野, 分野長 (10251232)
柿田 明美 新潟大学, 脳研究所, 教授 (80281012)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | USP10 / パーキンソン病 / 活性酸素 / Nrf2 / Keap1 / p62 / リン酸化 / 細胞死 |
Outline of Annual Research Achievements |
パーキンソン病(PD)は脳の黒質に存在するドーパミン作動性神経細胞の細胞死を特徴とする。SH-SY5Yはドーパミン作動性神経細胞に類似した特徴を持つ細胞株である。USP10の発現量が低下したSH-SY5Y細胞(USP10ノックダウン細胞)を作製し、ドーパミンで処理すると、野生型細胞よりも強く細胞死が誘導された。この細胞死は抗酸化剤(N-アセチル-システイン)によって抑制され、酸化ストレスが関与していた。Nrf2は様々な酸化ストレスによって活性化される転写因子で、様々な抗酸化遺伝子群の発現を誘導する。定常状態では、Nrf2はKeap1を介してユビキチンリガーゼ複合体に結合し、プロテアソームで分解されている。酸化剤で処理すると、p62の349番目のセリン残基がリン酸化され(pp62/Ser349)、このpp62/Ser349がKeap1に結合してNrf2をKeap1から遊離させ、Nrf2が活性化する。 p62ノックダウンまたはNrf2ノックダウンしたSH-SY5Yでは、ドーパミンによる細胞死が野生型細胞よりも増加した。USP10ノックダウン細胞のドーパミンによる細胞死は、Keap1ノックダウンにより部分的に抑制された。SH-SY5Y細胞をドーパミンで処理するとNrf2およびp62蛋白質の量が増加したが、この増加はUSP10ノックダウン細胞では抑制された。さらに、USP10ノックダウンSH-SY5Y細胞におけるpp62/Ser349量は野生型細胞よりも低く、Keap1とp62の結合は減少した。従って、USP10はpp62/Ser349の量を増加させることでNrf2活性を高めていることが示唆された。さらに、USP10ノックダウン細胞では、Nrf2の翻訳が減少していた。 これらの結果は、USP10機能の量的または質的低下がPDの病態に関与している可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
パーキンソン病は、脳の黒質などに存在するドーパミン作動性神経細胞の細胞死によって特徴づけられる。USP10がドーパミン神経細胞の細胞死を抑制していることを発見した。この発見は、USP10の量的あるいは質的機能低下がパーキンソン病における神経細胞死に関与するかんぅ性を示唆した。
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Strategy for Future Research Activity |
USP10がドーパミン神経細胞の細胞死を抑制している分子機構を明らかにする。USP10のノックアウトマウスを用いて、パーキンソン病のモデルマウスにおけるUSP10の役割を明らかにする。パーキンソン病の患者検体を用いて。パーキンソン病におけるUSP10の量的あるいは質的機能低下を明らかにする。USP10の量的あるいは質的機能低下を定量できる測定方法を探索する。
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Research Products
(4 results)