2022 Fiscal Year Annual Research Report
cGAS/STING/I型IFN経路を基軸とした癌免疫微小環境のホット化治療戦略
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22H02838
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
小林 博也 旭川医科大学, 医学部, 教授 (90280867)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小坂 朱 旭川医科大学, 医学部, 講師 (40561030)
大栗 敬幸 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (70564061)
長門 利純 旭川医科大学, 医学部, 講師 (80431419)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 腫瘍免疫 / cGAMP |
Outline of Annual Research Achievements |
ICI の臨床応用によって、癌患者自身の免疫細胞で癌細胞の増殖を抑えることが可能となったが、免疫抑制的な癌免疫微小環境が一つの原因となり、ICI の臨床効果は 20%程度の患者にしか認められていない。そこで、本研究課題ではcGAS/STING/I 型インターフェロン(IFN)経路の活性化を主軸として免疫抑制性の癌免疫微小環境を免疫学的に改善する(ホット腫瘍にする)ための新しい癌免疫治療法を開発することを目的として、今年度は、STINGを活性化させるcGAMPの細胞内への取り込みに着目して研究を行なった。cGAMPが脂質二重層の細胞膜を通過するには、細胞膜上のチャネルを利用する必要がある。そのチャネルの一つであるP2X7Rが開くにはATPが必要であるため、腫瘍組織内にATPが存在しなければならない。しかし、腫瘍組織中に浸潤する抑制性細胞はATPをADPに分解する酵素CD39を発現しており、腫瘍組織中のATP量が低い。そこで、マウス腫瘍モデルを用いて、腫瘍組織内のATP量を増加させることによってcGAMPの抗腫瘍効果が増強されるかを検討した。まず、cGAMPの腫瘍内投与の際にATPも同時に投与して、腫瘍増殖抑制効果を検討したが、ATPの併用投与によってむしろcGAMPによる抗腫瘍効果が減弱した。ATPはCD39によってADPに分解されたあと、癌細胞上に発現されるCD73によってAMPに分解される。AMPは免疫抑制効果をもっていることから、ATPを大量に腫瘍組織内に投与した結果、大量に産生されたAMPが免疫反応を抑制したと推察され、ATPを補充するのではなく、ATP分解酵素CD39の機能を抑制する方策の方が望ましいのではないかと考えた。そこで、CD39に対する阻害剤を用いてcGAMPによる治療効果が増強されるかを検討した。その結果、CD39阻害剤の併用によってcGAMPの抗腫瘍効果が増強されることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究内において、腫瘍組織内にATPを強制的に補充するだけではcGAMPによる腫瘍増殖抑制効果を増強しないことがわかった。CD39を阻害する低分子化合物が複数報告されているが、その中でもよりcGAMPの抗腫瘍効果を増強に適した化合物を特定することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究遂行内容をさらに推し進め、担癌マウスに対するCD39阻害剤とcGAMPの併用治療による担がん生体内における免疫細胞の動態を明らかにする。また、各種ヒト癌組織検体を用いて免疫染色を行い、腫瘍組織内のCD39 およびCD73の発現を組織学的に解析し、それらの発現と患者予後の関連を明らかにしCD39阻害剤の癌治療薬の可能性を検討する。
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