2022 Fiscal Year Annual Research Report
APOBEC3Aによる抗ウイルス作用と変異導入の分子機序に関する新たな展開
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22H02882
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | National Hospital Organization Nagoya Medical Center |
Principal Investigator |
岩谷 靖雅 独立行政法人国立病院機構(名古屋医療センター臨床研究センター), その他部局等, 部長 (90303403)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 抗ウイルス作用 / レトロウイルス / APOBEC3A / 核酸 / 変異 / 構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、これまで想定していなかった、APOBEC3AによるRNA編集という視点からAPOBEC3Aによる抗レトロウイルス作用と変異導入効果の分子機序、ならびに細胞内制御機序を精査することを目的で研究を行っている。本年度は、1)APOBEC3ファミリーのうち、APOBEC3AのみがRNA編集効果を示す理由の解明、2)レトロウイルの遺伝的多様性への効果について進展があった。まず、APOBEC3AのRNA編集における基質特異性として、RNAの二次構造上のloopやbulge領域に存在するUUCトリヌクレオチドを好むことがわかった。通常、DNAとRNAとではリボースの違いにより塩基間距離が異なり、RNAのUUCはAPOBEC3の基質認識部位への配位に不適である。しかし、RNAのloopやbulge(U-shape構造)ではリボースのsugar packerがDNA型(C2´-endo pucker)に変化するため、UUCの塩基間距離はDNAと近似し、APOBEC3の基質認識部位に認識されることがわかった。さらに、APOBEC3ファミリーのうち、APOBEC3Aのみが酵素基質認識領域のloop1配列が短いため、U-shapeのRNAとの立体障害がなく結合できることが分子構造計算により判明した。これらの理由から、APOBEC3Aのみが高効率なRNA編集作用をもつと考えられた (Nakata et al. NAR 2023)。レトロウイルスの遺伝的多様性への影響については、APOBEC3AによるHIV-1の感受性には違いがあることを明らかにした。マクロファージ指向性HIV-1では、T細胞指向性HIV-1に比べAPOBEC3Aに抵抗性をもつことを見出した。APOBEC3AはHIV-1の遺伝的多様性に影響を与え、結果的にHIV-1に細胞指向性による感受性の違いが生じたと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
APOBEC3ファミリーのうちAPOBEC3Aのみが高効率にRNA編集する分子機序を明らかにしたことは、当該分野において重要な知見を取得したといえる。一方で、2022年度に投稿した論文のリバイズの過程で、APOBEC3Aノックアウト細胞の作製に想定外の時間を要し、レトロウイルスの遺伝的多様性の評価の着手が遅れた。以上の理由から、総じておおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
野生型あるいは酵素活性欠失型(E72Q)APOBEC3Aを発現したCD4+リンパ球細胞を用いてHIVの順化実験を実施することにより、「APOBEC3AがHIV-1の細胞指向性の変化に影響を与える因子である」という知見を裏付けるデータを取得する。さらに、計画通り、レトロトランスポゾンに対するAPOBEC3Aの影響についてもLINE-1を用いて詳細な解析を進める。RNA編集による宿主細胞の影響に関するテーマでは、APOBEC3A発現細胞における宿主mRNAを次世代シーケンサーにより解析し、APOBEC3AによるRNA編集とウイルス・宿主RNAの遺伝的変化の検出しその効果を分析する予定である。
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Research Products
(11 results)