2023 Fiscal Year Annual Research Report
糖鎖―レクチン反応と光免疫療法の融合による新規癌治療
Project/Area Number |
22H02911
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小田 竜也 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20282353)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下村 治 筑波大学, 医学医療系, 講師 (60808070)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 膵がん / レクチン / IR700 / 光免疫 / 近赤外線 |
Outline of Annual Research Achievements |
膵管腺癌(PDAC)は現行の治療法に対して非常に抵抗性が高く、5年生存率が約10%と低いことが知られている。PDAC治療の新たなアプローチとして、抗原抗体反応を用いた抗体治療が盛んに開発されているが、本研究では細胞表面を覆う糖鎖を糖鎖結合蛋白であるレクチンで標的する新規の治療法の開発を目指す。レクチンに光反応性物質:IR700を結合させてがん細胞表面の最外層を構成する糖鎖結合させた後、近赤外線を照射する事により細胞膜を破壊する新しい癌治療法である。 がん細胞表面には標的糖鎖が多量に存在する為にrBC2レクチンをキャリアとすると抗体薬に比べて多量のIR700を送達できるという糖鎖―レクチン反応の利点と、近赤外線が当たらない臓器には副反応障害を起こさずにすむという光免疫反応の利点を融合する事により、がん組織へのダメージ(S:signal)を最大化し、オフターゲット臓器へのダメージ(N:noise)を最小化する新規の抗がん治療法が成立すると考えた。 研究の第一段階としては、ヒト膵癌に特異的に結合するrBC2レクチンをキャリアとしてPOCの獲得を目指すが、このレクチンが細菌由来である事からヒト患者への投与、臨床応用は困難だと考えている。本研究の中では、ヒト由来の内因性レクチンのなかからヒト膵がんに特異的に結合するレクチンの探索も行う。標的対象は膵がん細胞に限らず、がん関連線維芽細胞も視野に入れ、レクチン光免疫療法の臨床応用を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、膵臓癌に対する新しい治療法として、レクチンを用いた光線療法(Lec-PT)を提案した。膵腺管癌(PDAC)に特異的に結合するrBC2LCNレクチンを用いて、近赤外光(NIR)で活性化される光吸収剤IRDye700DX(rBC2-IR700)を結合させた治療法を開発した。 まず、Lec-PTの細胞毒性をヒトPDAC細胞株Capan-1を用いて検証し、rBC2-IR700が細胞に結合し、近赤外光に照射されることでのみ細胞毒性を示すことが確認した。次に、in vivo実験では、ヌードマウスに移植した細胞株および患者由来の腫瘍を用いて、Lec-PTの治療効果が確認できた。rBC2-IR700は、静脈内投与後2時間以内に腫瘍に蓄積し、近赤外光照射によって細胞毒性が誘導されることを示せた。また、繰り返し治療により腫瘍の成長をさらに抑制できた。 オフターゲット毒性の評価も行い、腹腔内臓器への近赤外光照射を遮断することでオフターゲット毒性が最小限に抑えられる事を確認した。この治療法は、膵臓癌に対して高い再現性と特異性を持ち、臨床開発に進める可能性を示せた。 本研究の成果は2022年11月の米国がん学会(AACR-Pancreatic cancer)にて、優秀演題の口演発表に選ばれ、また、2023 4月 International J Cancer誌に英文論文として発表する事ができ、概ね順調に研究は進展していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
2022-2023年度に予定していた研究-1 In vivoにおけるBC2レクチン-IR700結合体の腫瘍集積評価、研究-2 腫瘍への近赤外線照射とオフターゲット臓器への照射回避/遮蔽によるダメージ回避の確認は予定通り行い、英文論文化も終えた。今年度は、BC2レクチンの人への生体投与が可能かを判断する情報分析を行う。 一方、当研究室では、BC2以外のヒト体内に存在する内因性レクチンのがん組織への反応性を網羅的に解析している。従来はがん細胞を標的する分子にばかり着目していたが、本年度は膵がん間質に特異的に反応する線維芽細胞標的レクチンXを選び出す(Step1)。 Step2: レクチンXとIR700の結合体の生成、Step3: in vitro線維芽細胞株に対するレクチンX-IR700の集積性の確認、Step4:我々が独自に樹立している膵がん患者由来の線維芽細胞 (PD-CAF I, II, III・・・・)に対するレクチンX-IR700の集積性の確認 Step5: PD-CAF I, II, III・・・・とがん細胞のを混合接種した動物モデルを作成 Step6: In vivoにおける線維芽細胞標的レクチン-IR700結合体の腫瘍集積評価 Step7:Step6のモデルに赤外線照射を行い、腫瘍焼灼効果を判定する。
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