2022 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular basis for cancer precision medicine targeting tankyrase poly(ADP-ribose) polymerases
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22H02931
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
清宮 啓之 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター 分子生物治療研究部, 部長 (50280623)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 抗悪性腫瘍薬 / ポリ(ADP-リボシル)化酵素 / タンキラーゼ / 効果予測バイオマーカー / プレシジョン医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでに、がん抑制遺伝子APC変異の中でも特に、ドライバー因子β-カテニンの分解に必要な20-AAR領域を完全に欠失したShort APC変異が、タンキラーゼ阻害剤の効果予測バイオマーカーとなり得ることを報告してきた。今年度は、より多くのShort APC タイプおよび20-AAR を部分的に保持したLong APCタイプの患者由来大腸がん細胞(patient-derived cells: PDC)を用い、タンキラーゼ阻害剤RK-582およびG007-LKに対する感受性を検証した。その結果、Short APCタイプのPDCsはいずれも高感受性もしくは中程度の感受性を示すことが確認された。Long APCタイプの感受性は様々であったが、阻害剤耐性のPDCsは全てLong APCタイプであった。興味深いことに、APCが野生型のPDCsの中にも阻害剤感受性を示すものがあり、その一部はAPC以外のWnt経路遺伝子に変異を有していた。 一方、我々はこれまでに、Wnt経路とは関係なくタンキラーゼ阻害剤の細胞増殖抑制効果を増強するshRNAクローンを同定してきた。今年度は、当該shRNAの標的遺伝子Xをノックダウンした際のトランスクリプトーム解析を行い、遺伝子オントロジー(GO)解析によりこのときの細胞応答を明らかにした。同定されたGOタームの遺伝子群をノックダウンしたところ、タンキラーゼ阻害剤と最も強い合成致死性を示したのは遺伝子X自身であった。一方、阻害剤感受性PDCsのプロテオーム解析から、タンキラーゼの阻害とともにX関連因子が細胞内に蓄積することを突き止めた。興味深いことに、この因子はタンキラーゼ結合モチーフを有しており、タンキラーゼ阻害剤によりポリ(ADP-リボシル)化が阻害されることで、そのユビキチン分解が抑制されると推定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タンキラーゼ阻害剤の治療指数を向上させるには、同剤に高感受性を示すがんゲノムプロファイル、もしくは同剤と相乗的な制がん効果を発揮する併用剤の設定が有効である。しかし、その具体像は不明であった。本研究は、タンキラーゼを標的とするがんプレシジョン医療への布石として、適応がん種を大腸がんとしたときの効果予測バイオマーカーを非臨床レベルで確立することを達成目標としている。今年度はPDCsの例数を拡大して検証実験を行った結果、Short APCタイプのPDCsが複数の異なるタンキラーゼ阻害剤に対して高感受性もしくは中程度の感受性を示すことが確認できた。また、これまでの予想通り、耐性細胞は全てLong APCタイプであったものの、Long APC変異そのものはタンキラーゼ阻害剤感受性を規定せず、適用患者を選択する際の除外基準(exclusion criteria)にはならないことが確認された。新たな知見として、APC野生型PDCsの中にもタンキラーゼ阻害剤に感受性を示すものが見出され、その一部ではAPCとは別の遺伝子変異によりWnt経路が活性化していることが明らかとなった。一方、タンキラーゼ阻害剤の合成致死因子Xとその細胞応答、特にタンキラーゼによってポリ(ADP-リボシル)化修飾を受ける関連因子の存在が明らかとなった。これら一連の成果は、タンキラーゼ阻害剤の新たな作用メカニズムおよび効果予測バイオマーカーの解明に結びつくと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
大腸がんでは、Wnt経路に加えてKRAS/BRAF経路やPI3K/AKT経路などのがんドライバー経路が並行して活性化している。そこで、これまでに扱ってきたPDCsにおけるドライバー変異の共存状態をゲノム解析で精査し、β-カテニンの活性化様態およびタンキラーゼ阻害剤感受性との相関を解析する。また、これまでに同定した、タンキラーゼ阻害剤の細胞増殖抑制効果を増強するshRNAクローンは、様々な臓器由来のがん細胞株のうち、タンキラーゼ阻害剤耐性株を含む約3割の細胞株で阻害剤感受性化をもたらすため、このような合成致死性が認められた細胞株と認められなかった細胞株を比較解析し、両者の差を規定する因子を抽出したい。一方、我々はこれまでに、タンキラーゼ阻害剤がDNA傷害性抗がん剤の効果を増強することを報告してきた。さらに、タンキラーゼ阻害剤と微小管標的薬剤の併用は、一部のがん細胞に対して相乗的増殖抑制効果を示すことを見出している。今後は、タンキラーゼ阻害剤と抗がん剤の相乗効果が顕著に現れるがん細胞株と現れないがん細胞株の遺伝子変異・発現を比較解析し、前者の細胞株の特徴を分子レベルで明らかにしたい。
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[Presentation] Morino, S., Mashima, T., Suzuki, Y., Nagayama, S., Shirai, F., Katayama, R., Seimiya, H.2022
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