2023 Fiscal Year Annual Research Report
オリゴマーを標的とするシヌクレイノパチーの新規治療法開発
Project/Area Number |
22H02948
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
若林 孝一 弘前大学, 医学研究科, 教授 (50240768)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三木 康生 弘前大学, 医学研究科, 助教 (30709142)
森 文秋 弘前大学, 医学研究科, 准教授 (60200383)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | シヌクレイノパチー / αシヌクレイン / オリゴマー / モデル動物 / パーキンソン病 / レビー小体病 / 多系統萎縮症 |
Outline of Annual Research Achievements |
シヌクレイノパチー[パーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症(MSA)]では神経細胞やグリア細胞におけるオリゴマーを含むαシヌクレインの凝集が細胞変性や症状の発現に深く関与していると考えられている。我々はこれまで、シヌクレイノパチーではオートファジーに障害が生じていることを報告してきた。さらに最近、トレハロースの経口投与がマウスにおいて脳内のオートファジーを活性化することを明らかにした。しかしながら、シヌクレイノパチーにおいてαシヌクレインの凝集を標的とした治療法は開発されていない。そこで我々が開発したMSAモデルマウス(発症時期を任意に調節できる)を用い、トレハロースを経口および経鼻投与し病態改善効果について検証した。まず蛍光標識したトレハロースを経鼻投与し、トレハロースが脳内に到達していることを確認した。トレハロースの経口および経鼻投与はobject-location memory task test にてMSAモデルマウスの認知機能を改善した。一方、リン酸化αシヌクレイン抗体を用いた免疫組織化学にて脳内におけるαシヌクレイン陽性の凝集構造物はむしろ増加していた。さらに、proximity ligation assayにてαシヌクレインオリゴマーの量が減少していることを確認した。また、凍結脳を用いたwestern blottingでマウス脳におけるαシヌクレインのリン酸化が亢進していた。これらの所見からトレハロースは脳内におけるαシヌクレイン凝集を促進することでオリゴマーの量を減らし症状改善へと導いていると考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
αシヌクレイン凝集を標的としたシヌクレイノパチーの治療法開発を行い、トレハロースの経口および経鼻投与がMSAモデルマウスの脳内におけるαシヌクレインの凝集を促進することで認知機能を改善することを明らかにした。このことはαシヌクレインオリゴマーの除去がシヌクレイノパチーの治療法開発に有効であることを示唆している。以上より、研究計画はおおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
レビー小体病、MSAおよび正常対照のヒト剖検脳組織を用い、シナプス関連蛋白抗体を用いた免疫染色、αシヌクレイン抗体を用いたウェスタンブロット解析、オリゴマー抗体を用いたPLA解析を行う。次に、MSAモデル動物にエルゴチオネインを経鼻投与し、行動学的解析、免疫組織化学、αシヌクレインオリゴマーの半定量評価および生化学的解析を行う。さらに、経鼻投与による脳への導入効率の上昇のため、我々が開発した経鼻投与可視化マウスを用い、エクソソームや細胞膜透過性ぺプチドの利用の可能性について検証する。以上の検証により、αシヌクレインオリゴマーの除去を標的としたシヌクレイノパチーの治療法開発を進める。
|