2022 Fiscal Year Annual Research Report
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22H02952
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
井上 剛 岡山大学, 医歯薬学域, 准教授 (40370134)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 脳神経疾患 / てんかん / 代謝産物 / 電気信号 / ケトン食 |
Outline of Annual Research Achievements |
治療薬が効かない難治性てんかんの新薬開発を目指し、難治性てんかんに有効な「ケトン食」の作用メカニズムを解明し、新規てんかん創薬基盤の構築に繋げる。特に本研究では、ケトン食による代謝変化が、どのようにして神経電気活動を変化させるのか、その「代謝-電気クロストーク経路」を明らかにする。本年度は具体的に、以下2項目を実施した。 1、ケトン食の主要代謝産物としてケトン体が知られており、その電気制御能に関しては我々の報告(Epilepsia 2017)も含めて多数報告されている。一方で、それ以外のケトン食代謝産物に関しては、あまり注目されていない。そこで本年度はまず、通常食負荷マウス海馬に対してケトン食負荷マウス海馬において変動する代謝産物を、メタボローム解析により網羅的に同定した。さらにケトン食で変動した代謝産物の電気制御能に関し、マウス海馬のスライスパッチクランプ測定法を用いて評価した。その結果、電気制御能を有するケトン食代謝産物を2つ同定することに成功した。1つはケトン食で増加し、もう1つはケトン食で減少する代謝産物であった。 2、我々はこれまで、ケトン食代謝-電気クロストーク経路上に位置する代謝酵素として、乳酸脱水素酵素LDHを同定している(Science 2015, Epilepsia 2020)。さらに、既存薬StiripentolにLDH阻害作用を見出し(Science 2015)、Stiripentolの化学構造を改変することで強力なLDH阻害作用と抗てんかん作用を有する新規化合物を見出している。そこで本年度は、見出したLDH阻害剤の機能解析を進めると共に、独自で構築したスクリーニングシステムを用いることで新たなLDH阻害剤同定とそのin vivo抗てんかん作用評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、ケトン食代謝変化による神経作用メカニズムを明らかにし、難治性てんかんの新薬開発に繋げることである。令和4年度(1年目)において、ケトン食のメタボローム解析とスライスパッチクランプ測定を組み合わせることで、電気制御能を有するケトン食代謝産物を2つ同定した。さらに、ケトン食代謝-電気クロストーク経路上の代謝酵素LDHに作用する抗てんかん化合物の同定も進めている。上記を踏まえ、順調に研究が進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度において、電気制御能を有するケトン食代謝産物の同定に成功した。そこで令和5-6年度で、見出したケトン食代謝産物の作用メカニズム解析により作用分子を同定すると共に、in vivo抗てんかん作用も調べることで、創薬標的分子としての可能性を検証する。また、ケトン食代謝-電気クロストーク経路上に存在する分子として我々が見出した乳酸脱水素酵素の下流分子を探索することで、新規シグナルカスケードの同定を試みる。加えて、ケトン食作用メカニズムに基づく創薬標的分子として既に同定済みの分子(乳酸脱水素酵素、電位依存性カルシウムチャネル)に関しては、それら標的分子に作用する化合物同定とその機能解析を進める。
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