2022 Fiscal Year Annual Research Report
病態脳における小胞体プロテオスタシス破綻によるコレステロール合成不全と脳萎縮
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22H02954
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
西頭 英起 宮崎大学, 医学部, 教授 (00332627)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村尾 直哉 宮崎大学, 医学部, 助教 (20773534)
門脇 寿枝 宮崎大学, 医学部, 助教 (40568200)
上地 珠代 宮崎大学, 医学部, 准教授 (10381104)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 脳萎縮 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳萎縮は、多くの神経変性疾患と老化に共通する進行性の病態変化である。脳神経疾患では、オルガネラ機能の破綻が関与するが、なかでも小胞体との関連がとくに注目されている。これまでの小胞体品質管理に関する研究から、小胞体プロテオスタシス破綻が神経細胞のコレステロール合成を抑制し、そのため神経突起が短縮し、結果として脳萎縮に繋がることを発見してきた。コレステロールは、血液脳関門をほとんど通過しないため脳内で恒常的に合成される必要がある。本研究では、病態脳内においてプロテオスタシスの破綻により、コレステロール合成に必須な膜型転写因子SREBP-2の活性化が阻害されることが脳萎縮の原因であるとの仮説をたて、その分子メカニズムを解明する。脳神経疾患に共通する「プロテオスタシス破綻」と「脳萎縮」、さらにそのメカニズムとして「脳内コレステロール合成」に着目している。R4年度は、下記について進捗を得た。 ①生理的、病理的状況下での小胞体膜タンパク質構成因子の変動に関する知見。 ②神経突起伸長依存的なDerlin複合体形成に関する知見。 ③Derlin依存的なSREBP-2活性化に必要な因子に関する知見。 ④小胞体プロテオスタシス破綻によるDerlin-SREBP-2制御の変化に関する知見。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
R4年度は下記の研究成果により想定以上の知見を得ることができ、令和5年度以降の研究につながると期待する。 生理的、病理的状況下でのDerlin複合体によるSREBP-2制御メカニズムについて。 1)神経突起伸長の誘導実験系を用いて、刺激依存的にSREBP-2が活性化される際のDerlin複合体の役割について解析し、Derlin-SREBP-2-コレステロール合成経路活性化の局在を解明に繋がる知見を得た。 2)神経突起伸長に際してコレステロール要求時に機能するDerlinがどのような分子複合体を形成しているか、プルダウンアッセイにより結合分子を同定し解析し、結合候補分子を同定した。 3)神経細胞においてDerlin依存的にSREBP-2が活性化される際に必要な分子を探索するため、ゲノムワイドsiRNAスクリーニング実験系の構築を開始した。 4)プロテアスタシス破綻によるSREBP-2不活性化メカニズムについて、小胞の選別輸送の観点から解析し、SREBP-2特異的COPII小胞の関与が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
R4年度の研究成果をもとに、R5年度以降は下記内容について推進する。 1)神経細胞内の小胞体上でのDerlin-SREBP-2制御場の検討として、コレステロール合成に関わるDerlin/SREBP-2複合体について、小胞体ストレス時のDerlin/ERAD複合体と比較することで、空間的差異を検討する。①コレステロール要求性のDerlin複合体形成について、それぞれの細胞内在性分子抗体、Tagノックイン細胞を用いて、神経細胞内での制御場をイメージング解析する。その際、老化脳で観察されるプロテアソーム阻害依存的な変動についても検討する。②突起伸長時のSREBP-2の小胞体からゴルジ体への動的変化について、RUSHアッセイにより検討し、小胞体ストレス時の変化と比較する。 2)病態モデルでの検証として、in vitro実験から明らかになるメカニズムについて、polyQ病および老化マウスで検証する。①マウス初代培養神経細胞に、弱いプロテアソーム阻害剤を作用させる、あるいはpolyQタンパク質を発現させ、神経突起短縮におけるSREBP-2-コレステロール合成阻害の関与について検討する。②老齢マウスおよびpolyQトランスジェニックマウスを用いて、脳での小胞体プロテオスタシス破綻とコレステロスタシスの関係について組織学的、生化学的、遺伝子発現解析により解析する。 3)脳萎縮緩和のための分子標的を探索するため、Derlin KO神経細胞において、ゲノムワイドsiRNAおよびケミカル化合物スクリーニングにより、SREBP-2を活性化できる分子、化合物を探索する。
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