2022 Fiscal Year Annual Research Report
circRNA-miRNAによる大動脈弁狭窄症病態解明とバイオマーカー創出の挑戦
Project/Area Number |
22H02973
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
山口 宗一 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 准教授 (20325814)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 征郎 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 特任教授 (20082282)
大山 陽子 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 特任助教 (20583470)
東 貞行 鹿児島大学, 鹿児島大学病院, 医員 (20866701)
竹之内 和則 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (30646758)
上田 英昭 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (50598274)
橋口 照人 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (70250917)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | miRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、大動脈弁石灰化の病態の新たな概念を構築し、大動脈弁狭窄症 (AS) の新規の血中バイオマーカーを模索するものである。3つの研究項目に分けて3年間で遂行する計画を立てて以下の通りの成果を得ている。 1)AS の病態を反映する血中の non-coding RNA (ncRNA) の探索:AS患者の血液採取は、鹿児島大学病院倫理委員会の審査による認定のもと、当院の心臓外科との共同研究にて既に開始されている。AS患者の大動脈弁置換術(AVR)の施行前後における血清からRNAを抽出して、microRNAのマイクロアレイを行った。AVR前後の血清microRNAの比較から、一定の変化を認めるmicroRNAを得ることができた。また、これらのmicroRNAについての文献的な検討を行った。 2)大動脈弁石灰化分子機序の解明:血管内皮細胞やマクロファージを中心とする炎症細胞が、大動脈弁石灰化にどのように関わるかを、炎症と代謝の側面から研究しており、本年度は、弁間質細胞の代わりにヒト血管平滑筋細胞を用いて、石灰化の条件の設定と、一部microRNAの導入による石灰化の変化について検討した。アリザリン染色やRunx2などの遺伝子発現増強等の石灰化は確認でき、この石灰化に影響するmicroRNAの選定も予備実験レベルで確認できた。 3)全身の血管内皮機能異常と大動脈弁の関係の探求:細胞外小胞に内在するsmall non-coding RNAはシグナル伝達分子として、また疾患のバイオマーカーとして重要である。研究計画1)において同定されたmicroRNAが細胞外小胞内にあるか、どの組織由来のものか、どのような作用を持つか、など検討し、ASにおける血管機能変化の原因を突き止めていくが、3年間の計画の中で、この研究は次年度からの予定であり、今年度は文献検索を行い知識のアップデートを行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で記した3つの研究項目について、計画に則した研究の遂行が概ねできているため、想定通りの進捗状況と判断した。各項目の簡単な進捗状況は以下の通りである。 1)本年度は、AS患者からの検体採取と、その一部を用いてmicroRNAのプロファイリングを行う予定を立てていたが、これらを年度内に施行することができた。 2)培養細胞レベルで、石灰化の条件設定ができたのは一定の成果と考える。石灰化に影響を与えるシグナルや刺激などについて検討中で研究の途中であるが、次年度に繋がる研究環境は構築できており、まずまずの進捗状況と考える。 3)生体において細胞外小胞による各臓器、組織間の情報連関はホメオスタシスを保持するために重要なイベントである。進歩の目覚ましい研究分野の一つであり、細胞外小胞の研究手法も進化している。本年度は実験の計画はほとんどなかったため、文献検索等でこれらの研究方法などを学習し、順調に知識の整理を行うことが出来た。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は、主に AS の病態を反映する特異的な microRNA の同定とその血中での動態について検討する予定で研究を進め一定の成果が得られた。次年度の3つの研究計画の推進方策は、以下の通りに予定している。 1)AS患者においてAVR前後の血清microRNAのマイクロアレイ比較で同定したmicroRNAを、検体採取している多数のAS患者の血清で測定して、そのmicroRNAの臨床における重要性を検討する予定である。また、培養細胞を用いた石灰化状態に関与するmicroRNAのマイクロアレイも時間が許せば施行したい。これらのプロファイリングの共通項を検討することで、より重要度の高いmicroRNAの同定に繋がると考える。 2)本年度は諸事情で弁間質細胞を得ることができず、ヒト動脈平滑筋細胞を石灰化実験に使用したが、次年度はより大動脈弁石灰化のモデルに則した培養細胞を検討し、その後の研究に使用する予定である。ASという病態においても、細胞外小胞は血管内皮機能の変容をもたらす一つの要因と考える。従って血管内皮細胞との連関についての研究も取り入れていきたい。 3)エクソソームを含む細胞外小胞の抽出法について、現在行われている段階的超遠心法に加えて、いくつかのカラム、ビーズで、方法論を確立した後、細胞外小胞中のmicroRNAについて細胞シグナル伝達への影響、細胞外小胞の放出、取り込みの新機序の検討を行う予定である。
|
Research Products
(5 results)
-
-
[Presentation] 左房内Pentraxin3の心房細動アブレーション前後の変化と左房機能関連因子との関連2023
Author(s)
鉛山かおり, 波野史典, 市来仁志, 鎌田博之, 吉元一成, 二宮雄一, 堀添善尚, 笠畑拓志, 政元いずみ, 山口宗一, 橋口照人, 大石充
Organizer
第87回日本循環器学会学術集会
-
-
-
[Presentation] 大動脈狭窄症での大動脈弁置換術による血流変化がもたらす血中マイクロRNAの変化2022
Author(s)
上田 英昭, 山口 宗一, 松本 和久, 今釜 逸美, 向原 公介, 重久 喜哉, 豊川 建二, 川井田 啓介, 立岡 修治, 橋口 照人, 曽我 欣治
Organizer
第75回日本胸部外科学会定期学術集会