2022 Fiscal Year Annual Research Report
癌とよく似た細胞内代謝機構に着目した肺高血圧症の新規治療薬開発
Project/Area Number |
22H03064
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 公雄 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 准教授 (80436120)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
植田 浩史 東北大学, 薬学研究科, 講師 (50581279)
宮田 敏 帝京大学, 公私立大学の部局等, 教授 (60360343)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
|
Keywords | 肺動脈性肺高血圧症 |
Outline of Annual Research Achievements |
肺動脈性肺高血圧症(PAH)は、依然として内科的根治が難しい致死性疾患である。病態の基盤は肺動脈血管平滑筋細胞の癌類似の増殖性亢進にあり、増殖機序の解明と根治的治療薬の開発が求められている。これまで、肺移植での摘出肺由来の肺動脈血管平滑筋細胞のライブラリー化、網羅的オミックス解析や病因蛋白の大規模スクリーニングを行い、PAH病因蛋白群を発見した。さらに、それぞれの病因蛋白の阻害による全く新しい治療薬スクリーニングの技術を確立した。本研究では、以上の知見に基づき、全く新しいPAHの早期診断技術開発とアカデミア創薬の臨床応用を目指し研究を進めている。 研究1.PAH患者由来の肺動脈血管平滑筋細胞の代謝機構と増殖機構の解明:PAH患者由来の肺動脈血管平滑筋細胞は癌細胞に特徴的なWarburg効果による代謝性変化を示すことが判明した。過剰な糖取り込みと解糖系の亢進に加えて相対的なミトコンドリア機能低下を示すことを確認した。研究2.個々の病因蛋白および治療薬候補に関する今後の具体的な研究計画:これまで見出してきた各種の病因蛋白および治療薬候補となる特許取得済みの低分子化合物群について、バイオマーカー開発および創薬スクリーニングを進めている。 研究3.データベース化とネットワーク統計解析:これまでライブラリー化したPAH患者由来サンプルを用い、オミックス解析による分子・蛋白網羅解析や全エクソーム解析を進めている。血清中サイトカイン・アレイデータ、カテーテルによる血行動態評価も含めた重症度や治療反応性等の臨床データの横断的解析を実施している。MOE, LSBIやChemotargets Clarity等の解析システムを用いることで蛋白-化合物結合性および副作用スクリーニングを進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概要に記載した通り、以下の研究について当初の予定で研究が進んでいるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
肺移植施設である東北大学病院は重症例を多く抱え、助けられない患者も多い。こうした環境を生かし、稀少疾患ではなかなか得られない貴重なサンプルのライブラリー化を完成させる。さらに、肺移植で得られた患者由来の肺組織や癌のように無限増殖する肺動脈血管平滑筋細胞を生かした世界でも稀な研究手法を用い、肺高血圧の原因解明と診断薬開発、そしてアカデミア創薬を進めていく。このように患者由来の樹立細胞を用いた全く新しい病因蛋白の同定に加え、その抑制を指標とした治療薬スクリーニングを進め、これまでとは異なる作用機序によるPAH根治薬の開発を進めていく。
|