2023 Fiscal Year Annual Research Report
収縮性の保持された心不全の発症・進展機序の解明に関する研究
Project/Area Number |
22H03072
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
斎藤 能彦 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (30250260)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 仁 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (20533730)
野木 一孝 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (30867396)
中田 康紀 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (70812379)
上田 友哉 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (80755538)
尾上 健児 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (90510173)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 収縮性の保持された心不全 / AI / phenotyping / RNA sequence / モデルマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
収縮性の低下した心不全(Heart Failure with reduced Ejection Fraction:HFrEF)では、病因に関わらず、交感神経系やレニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系の過剰な活性化により、悪循環が生じ、その結果心不全が増悪する。実際に、β遮断薬やRAA系阻害薬が心不全予後を改善させている。しかし、収縮性の保たれた心不全(HF with preserved EF:HFpEF)では、β遮断薬やRAA系阻害薬が心不全予後の改善に至らなかったことより、HFpEFの病態発症進展に、交感神経系やRAA系以外の生体内システムが関与していると考えられる。しかし、その生体内システムは不明である。 本研究では、HFpEFの発症・進展に関与する生体内システムを探索することを目的とする。これを成すために、本研究では以下の3つのテーマを計画した。① HFpEFが複雑な病態であることに注目し、大規模HFpEF臨床コホートを対象に、多種類のバイオマーカーと臨床指標を用いてAIによりphenotypingを行い、HFpEF進展に関与する生体内システムを探索する。②予備検討で、HFpEF左室生検組織では、炎症細胞の浸潤と線維化が存在していることを見出している。これに注目して、HFpEF生検組織を用いて、RNA sequenceより分子病理的特徴を明らかにする。③HFpEFの病態解明の遅れている原因に動物モデルの欠如があることを鑑み、HFpEFの発症進展機序解明に利用可能な、HFpEF動物モデルを開発する。我々が熟知しているsFlt-1 KOとGC-A KOマウスを交配して作成する。 以上3つのテーマを軸に本研究課題に取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で計画している3つのテーマについて、① 大規模HFpEF臨床コホートを対象に、多種類のバイオマーカーと臨床指標を用いてAIによりphenotypingを行い、HFpEF進展に関与する生体内システムを探索する。に関しては、解析が終了し、論文投稿に至りました。さらに、このphenotypingに基づき、各患者群の有するバイオマーカーの探索に取り組んでいる。 ②HFpEF生検組織を用いて、組織のRNA sequenceより分子病理的特徴を明らかにする。に関しては、典型症例を用いてRNA sequenceを行った。HFrEF(収縮性の低下した心不全)症例と対比させ、どのような生物学的機序の違いが存在するかを検討している。 ③HFpEF動物モデルを開発する。に関しては、sFlt-1 KOとGC-A KOマウスを交配させ、高脂肪食や食塩負荷を行い、その表現型を検討している。 以上の進捗状況より、概ね順調に進展している、と判断します。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で実施中である3つのテーマについて、① 大規模HFpEF臨床コホートを対象に、多種類のバイオマーカーと臨床指標を用いてAIによりphenotypingを行い、HFpEF進展に関与する生体内システムを探索する。に関しては、既にAI解析を終え論文投稿に至ったが、このphenotypingに基づき、各患者群の有するバイオマーカーの探索に現在取り組んでいる。引き続き解析を進め、有用なバイオマーカーの探索に挑みたいと考えている。 ②HFpEF生検組織を用いて、組織のRNA sequenceより分子病理的特徴を明らかにする。に関しては、昨年度、Smart3SEQ法という微量組織切片から試行可能なRNA抽出法を利用し、RNA sequenceを行った。対照として、HFrEF患者組織から抽出したRNAを用い、HFpEF vs. HFrEF患者心筋における遺伝子発現の違いを対比解析予定である。 ③HFpEF動物モデルを開発する。に関しては、sFlt-1 & GC-A double KOマウスの作製に成功している。本年度は、HFpEFに特徴的な高脂肪食や食塩摂取によるその表現型を解析して、HFpEFモデルとして適切であるか検討を継続したいと考えている。
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