2023 Fiscal Year Annual Research Report
血球細胞DNAメチル化をターゲットとした慢性腎臓病新規治療戦略の開発
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22H03091
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
林 香 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (60445294)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菱川 彰人 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (50867489)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 慢性腎臓病 / DNA損傷 / DNAメチル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず糸球体障害と並んで腎障害進展に重要な役割を果たす尿細管細胞に注目し、近位尿細管細胞特異的にホーミングエンドヌクレアーゼI-PpoIを発現させ、二本鎖DNA切断を繰り返したマウスを作成して検討した。その結果、近位尿細管細胞における二本鎖DNA損傷の反復により、体重減少、脂肪量減少、耐糖能異常、肝機能障害がもたらされることが示唆され、メタボローム解析の結果、腎臓および肝臓でミトコンドリア障害、脂肪酸代謝障害が示唆された。シングルセルRNA-seq解析の結果、活性化マクロファージ・単球が、脂肪細胞や肝臓の炎症を介して代謝変化に関与している可能性が示唆され、更に、DNAメチル化変化が関与している可能性が示唆された。この末梢血DNAメチル化変化は、ポドサイトDNA損傷に続発する変化とは異なっており、今後更にメカニズムの検討を進める。 また、ポドサイトにおけるDNA二本鎖切断は、DNAメチル化変化が関与するCD8T細胞の活性化をもたらすことを報告したが(Cell Rep 2023) 、ポドサイトにおけるDNA修復酵素ERCC1の欠損により、二本鎖DNA,一本鎖DNA切断断片両方の蓄積がポドサイトに認められるマウスモデルを作成した。このマウスにおいては、ポドサイトの形態変化に伴いネフローゼが惹起されるとともに、末梢血にCD44陽性メモリー細胞の増加を認め、更に心臓や肝臓など他臓器で、炎症、老化マーカーの上昇が認められたことから、ポドサイトDNA損傷は他臓器に炎症や老化を惹起する可能性が示唆された(BBRC 2024)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスの準備、解析を含め、当初の計画通りおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、ポドサイトDNA損傷とは異なる末梢血DNA損傷を惹起したメカニズムについて、エクソソームに注目して更に詳細に検 討を行う。エクソソーム含有DNAメチル化酵素mRNAに差を認めていることから、遺伝子特異的なDNAメチル化変化に関連する因子をエクソソーム含有核酸の網羅的解析により検討する。
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