2023 Fiscal Year Annual Research Report
末梢自己反応性B細胞の生体恒常性維持における役割の解明
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22H03112
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田中 伸弥 九州大学, 生体防御医学研究所, 准教授 (80462703)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 自己免疫疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
Tet分子のB細胞受容体刺激における内因的役割を検討する為、モデル抗原HEL特異的B細胞受容体のTgマウスを用いて実験を行った。HELタンパク質を同Tgマウスに継続的に投与することで疑似的なアナジー状態を誘導し、同マウスより単離したB細胞を、培養系を用いて解析したところ、Tet分子欠損条件下においては、野生型と比べ、活性化分子の発現が遷延化することが明らかになった。この結果は、Tet分子が、B細胞受容体刺激によって誘導されるシグナルの継続的伝達を何等かの分子メカニズムを介して、抑制する役割を担っていることを示唆していた。また、老齢個体を解析したところ、Tet欠損条件下においてのみ、老化マーカーが上昇している結果を得た。このことは、Tet分子が、細胞老化の抑制に寄与する可能性を示唆していた。さらに、研究代表者が樹立したB細胞特異的欠損マウス (自己免疫疾患モデルマウス) において、自己反応性T細胞を同定し、解析する為、T細胞活性化を可視化するレポーターマウスを樹立を試みた。この新規レポーターマウスにおいては、レポータータンパク質を発現するCD4陽性T細胞が血中内に存在することが明らかになった。これまでに、制御性T細胞の一部においてT細胞受容体のシグナルが活性化している集団が存在することが報告されており、本研究結果は、この報告と一致する現象であることから、樹立したレポーターシステムの機能性を示唆するものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
B細胞受容体による抗原認識時にTet分子が同受容体由来のシグナルの遷延化を抑制することが示され、このメカニズムがB細胞の末梢寛容に寄与している可能性が示唆された。また、Tet分子が細胞老化を抑制する新規の役割がある可能性が示唆された。今後、これらの分子メカニズムの解明への展開が予期される。さらに、研究代表者が樹立した自己免疫疾患マウスモデルと組み合わせることで、自己反応性T細胞を検出する為のレポーターマウスが作製され、その機能性が概ね確認された。今後、自己反応性T細胞の解析が可能になると考えられる。以上のことから、計画研究は順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに得られた知見を元に、Tet分子に依存した自己寛容を維持する、または、細胞老化を抑制する分子メカニズムを明らかにする為、Tet標的分子の同定を行い、その機能解析を実施する。また、T細胞活性化レポーターマウスの基礎的解析を実施し、その機能性、信頼性を精査する。その後、独自の自己免疫疾患マウスと組み合わせることで、自己反応性T細胞の解析へと展開する。
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