Outline of Annual Research Achievements |
毛細血管は表面を多糖類や糖タンパク質で構成される糖衣(血管内皮グリコカリックス: eGCX)に覆われ,生体維持の役割を担っており, eGCXの形態が臓器により異なること,全身炎症を惹起させた場合にはeGCXの薄い臓器から臓器障害をきたすことが知られている.臨床的に侵襲の種類によって障害されやすい臓器や部位が異なることは知られているが,これは臓器防御機構の最前線に位置する血管内皮細胞の形態やeGCXの構造の違いが関与していると考えられる. 前年度までに、各臓器におけるeGCXを構成する糖タンパク質および糖鎖の違いを評価するために各臓器のeGCXのイメージングに各種レクチンを使用しその有用性を検討した. 蛍光色素で標識した7種類のレクチン(レクチン1-7)を用いてマウスの脳, 肺, 腎臓, 心臓, 肝臓, 膵臓, 小腸, 大腸を染色し評価を行った.脳の他の組織と比較してレクチン1-3は血管に特異的に染色され, 特にレクチン1,2は脳eGCXの可視化に有用と考えられた. 一方, レクチン1,2, 4は脳の他の組織と比較して, 脳脈絡叢, 糸球体, 肝臓の血管に特異的に陰性であった. レクチン5, 6は各臓器のeGCXに強い染色性を示したが, 同じ臓器の他の組織と比較すると非特異的であった.レクチン7はマウス臓器のeGCXにおいて染色性を示さなかった. 本年度はヒトの細胞(肝臓, 大腸, 腎臓, 脳, 皮膚, 肺, 心臓)を用いてレクチンによる細胞間の糖鎖プロファイルを比較したところ、同じ連続型の血管構造を持つ脳、肺、心臓ではシアル酸構造認識レクチンの割合が大きく異なっていることが確認された。
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