2023 Fiscal Year Annual Research Report
肉腫における体液分子診断技術の統合的開発と循環分子の新規治療標的としての検証
Project/Area Number |
22H03202
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
尾崎 敏文 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (40294459)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 智洋 岡山大学, 大学病院, 講師 (80639211)
近藤 宏也 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, レジデント (40846911)
畑 利彰 独立行政法人国立病院機構四国がんセンター(臨床研究センター), その他部局等, 医師 (50880887)
杉原 進介 独立行政法人国立病院機構四国がんセンター(臨床研究センター), その他部局等, 部長 (60314671)
吉田 晶 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 技術職員 (00910514)
近藤 彩奈 岡山大学, 大学病院, 医員 (80910512)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 肉腫 / リキッドバイオプシー / サイトカイン / 腫瘍随伴マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
骨軟部肉腫には有用な血中バイオマーカーに極めて乏しく、予後改善を妨げている。歴史的には、骨軟部肉腫の一部に特異的な融合遺伝子が発見されたことで組 織診断の精度は向上したが、これまで血液を用いた非侵襲的な方法は開発されていなかった。本年度は、腫瘍分泌サイトカインの体液診断法への応用の可能性に ついて検討を行った。本施設で手術治療を行った骨肉腫患者14名における、治療前血清中サイトカインA濃度を測定したところ、遠隔転移を示した症例7例におけるサイトカインA濃度は、遠隔転移を示さなかった症例7例に比較して高値を示すことが明らかになった。遠隔転移を示した症例はその70%程度が腫瘍死しており、治療前血清サイトカインA濃度が予後因子になる可能性が示唆された。別コホートとして、当院で手術治療を行った粘液線維肉腫(MFS)患者22名、未分化多形肉腫(UPS)患者20名における、治療前血清中サイトカインB濃度を健常人を対象に計測した。UPS群、MFS群の血清中サイトカインA濃度は、それぞれ健常人に比べ有意に高値を示すことが明らかになった。また、UPS群、MFS群におけるTAMは腫瘍組織において、それぞれ約 20-30%の浸潤が確認された。以上の結果から、浸潤性軟部肉腫はサイトカインBを分泌し、血流にのって腫瘍微小環境にTAMを誘導している可能性が示唆された。以上の結果から、肉腫各組織型における血中サイトカイン測定によ り、TAM誘導の程度や腫瘍進展の可能性および予後を予測し、TAMを標的とした治療選択に応用できる可能性があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、肉腫における体液診断技術の開発を、循環核酸やエクソソームなどの細胞外小胞だけでなく、腫瘍分泌サイトカインを含めた検討を当初より計画していた。昨年度行った軟部肉腫において最も治療に難渋する粘液線維肉腫(MFS)、未分化多形肉腫(UPS)に加え、原発性悪性骨腫瘍で最も頻度の高い骨肉腫において、サイトカインAに着目した体液診断法が有用である可能性が示された。サイトカインAが高い患者では、実際に患者生体内で腫瘍内TAM浸潤率が高く、予後にも相関することが示された。この臨床病理学的検討を当該年度の目標としており、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
血中マイクロRNA、細胞外小胞、サイトカイン以外にも体液分子診断に応用可能な他の循環分子も解析に含め、肉腫各組織型における体液診断法の分子別の有用性についても検討していく。また、今年度特定した血中サイトカインが肉腫由来であることを確認するため、in vitroおよびin vivo肉腫TAMモデルを用いてサイトカインの分泌状況や血中動態を解析するだけでなく、サイトカイン阻害剤を用いてその機能がどのように変化するかを確認することで、治療的意義があるかどうかも検討する。また、さらなる症例を追加検討し、臨床病理学的検討を深める。
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