2022 Fiscal Year Annual Research Report
Mechanisms of neuronal function after cell transplantation for spinal cord injury using chemogenetic tool
Project/Area Number |
22H03205
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
名越 慈人 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (10383837)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 脊髄損傷 / ヒトiPS細胞 / 神経前駆細胞 / 細胞移植治療 / DREADDシステム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、亜急性期脊髄損傷に対して細胞移植を行い、宿主の伝導路と移植細胞由来神経軸索との機能的な連絡を証明することに成功した。まずin vitroにおいて、移植する神経前駆細胞に微弱な神経活動を発光に変換するウィルスベクターを導入し、カリウムを添加して刺激を行うことで、発酵強度の増加を認めた。その後脊髄損傷動物モデルの皮質脊髄路に興奮性DREADDをウィルス導入し、CNOリガンドによる刺激を行ったところ、移植細胞の発光が増加することを明らかにした。この結果は、宿主と移植細胞との神経連絡が新たに形成され、宿主側から移植細胞への入力を直接証明した成果である。 また、移植する神経前駆細胞に抑制性DREADDシステムを導入し、脊髄損傷の動物モデルに移植して、リガンドであるCNOを投与する研究を行った。その結果、CNO投与後に一時的に運動機能が低下することも明らかにした。この結果は、今度は移植細胞の神経機能の低下が、宿主の運動機能に影響することを明らかにしており、宿主と移植間の直接的なシナプス形成と機能的な連絡を包括的に証明する成果となった。 さらに移植細胞自体に興奮性DREADDを導入し、移植後の動物個体にCNOを投与して直接刺激し続けることで、シナプス形成と機能的な興奮作用が高まり、神経保護と機能回復に結びつくことも明らかにした。 本成果は多数の学会及び査読付きの英語論文において、学術的に広く公表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
化学遺伝学の手法を駆使し、移植した細胞から分化した神経軸索が損傷脊髄の宿主ニューロンとシナプス を形成して、機能的な連絡を構築する過程を明らかにした。これまで報告では、細胞移植治療の有効性は多数証明されているものの、あくまで組織学的評価に終始しており、本成果はニューロンの機能的結合を直接証明した画期的な成果と考える。DREADDシステム自体も、当研究室で複数の研究者により確立され、過去の報告と比べても問題なく作用しており、データの取得においても大きな問題がなく推移した。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、移植細胞からの入力が宿主の神経機能に影響を与えることを明らかにした。しかし移植した細胞は、興奮性および抑制性ニューロン への双方の分化能を示しており、どのような性質の神経軸索が機能に影響を与えているのかはいまだにわかっていない。2023年度は興奮性および抑制性のニューロンへの分化誘導を行って、in vitroにおいて評価して特性の確認を行った上で、脊髄損傷動物モデルへ移植し、その効果を検証する。 次に宿主から移植細胞への連絡について、移植細胞が神経活動依存的に発光するシステムを利用した成果を受けて、マウスのライブイメージングによってその活動を可視化できないか検証する。発光システムに使用しているAka-lucは、従来の発光システムであるフシフェリンの約100倍の発光強度があり、1細胞レベルの発光においても動物の体外からの可視化が可能である。DREADDシステムを用いて、宿主の皮質脊髄路を興奮させ、移植細胞への入力が行われている状態で、発光蛋白を可視化するルマゾンを用いて外部からカメラでモニターし、運動機能の変化に伴う移植由来ニューロンの活動性を評価する。 さらに、移植した神経前駆細胞に対して興奮刺激を長期間行うことで、運動機能の回復が認められることを明らかにしたが、その機序について、既報ではシナプス形成だけではなく軸索の髄鞘化も重要な要素の一つと考えられている。本研究で得た組織像をもとに、ミエリン形成を組織学的に詳細に評価し、オリゴデンドロサイトやシュワン細胞をはじめとする髄鞘を形成する細胞が、移植細胞への長期刺激によってどのように作用するかを検証する。豊富な髄鞘化が認められれば、電気生理学的な検討を追加し、脊髄再生の新たなメカニズムを証明する。
|