2023 Fiscal Year Annual Research Report
HPVワクチン再普及のシミュレーションと生まれ年度別の子宮頸がん罹患リスク予測
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22H03225
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
上田 豊 大阪大学, 大学院医学系研究科, 講師 (10346215)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 慧 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (30650593)
八木 麻未 大阪大学, 大学院医学系研究科, 特任助教(常勤) (30793450)
池田 さやか 大阪大学, 大学院医学系研究科, 招へい教員 (40818902)
市川 学 芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (60553873)
小林 栄仁 大分大学, 医学部, 教授 (50614773)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | HPVワクチン / 情報 / インタビュー調査 / 接種率 |
Outline of Annual Research Achievements |
本邦においてHPVワクチンは停止状態となっている。全国の自治体での個別案内や積極的勧奨の再開だけでは接種率の充分な回復は期待できず 、医師から対象者の母親たちへの情報提供や母親たちの中での情報共有・拡散が接種率上昇の鍵となる。当研究では、医師や友人等からの情報伝達がどのように広がっていくのかをAgent-based simulation手法を用いて可視化し、そこから推計される接種率を用いて、各生まれ年度の生涯の子宮頸がん罹患・死亡リスクの予測を行い、リスク軽減に資する情報発信手法の確立を目指す。 2023年度にはインタビュー調査を実施した。多くの対象者にとって健康への興味・関心は薄く、予防よりは、不調を感じたら対応するという姿勢が見られた。また健康に関して特に積極的に情報収集はしていないが、情報を求めるのであればGoogle検索かSNSで収集する対象者が多かった。多くの対象者にとって健康は「広がらない話題」として認識されており、「話題にするきっかけがあれば話すこともあるが、特段話す必要がなければ話さない」という位置付けのトピックであった。なお、年齢や家族構成などによって、HPVワクチンを含む健康情報等の共有のされ方や、それが意思決定・行動変容が異なることなども判明した。 今後、HPVワクチン接種率、HPV感染、子宮頸がん罹患・死亡リスクのシミュレーションを行っていく予定である。このうち、接種率については全国における2022年度までの各生まれ年度ごとの累積接種率は把握できているが、定期接種・キャッチアップ接種とも接種率の上昇は限定的である。また、2023年度も一部自治体のデータでは接種率は2022年度に比べて上昇していないことが判明している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インタビュー調査では、HPVワクチンの接種を終えていない2004~2006年度生まれの女性へのインタビューを通して、彼女たちの健康意識や健康行動(HPVワクチンの接種、低用量ピルの服用等を含む)、そうした行動に影響した事がら(情報源や人からの勧め)、自らの情報発信について理解し、今後に向けた、より望ましい行動変容促進のための施策の検討に資する情報収集を行った。 健康行動に影響する要因、健康行動の意思決定の主体(家族の影響)、健康に関する主な情報源、周囲(友達)のHPVワクチン接種状況に関する認知(話題にのぼったことがあるか)、周囲(友達)に話しやすいか、友人への健康行動に関する情報の共有(話すこと・話さないこと、話さないもしくは相手を選んで慎重に話すこと)、“SNSへの投稿”における“対面でのコミュニケーション”との違い、などについて情報を入手できた。 また、Agent-based simulationに関しても、昨年度から引き続き、HPV感染の伝播のシミュレーションを継続的にトライしており、様々なシナリオでのHPV感染の広がりが精度よく予測できる状態になってきている。 以上のことから、当研究の進捗はおおむね順調と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
生まれ年度による生涯の子宮頸がん罹患・死亡リスクの予測が最終目標であるが、その基となるのがHPVワクチン接種率であり、それには社会環境や情報の共有のされ方が大きく関わる。2022年度にはインターネット調査にて、HPVワクチン定期接種対象者の母親およびキャッチアップ接種対象者本人のHPVワクチンを含む 健康情報の入手に関する特性を把握できた。2023年度はインタビュー調査にて、年齢や家族構成などによって、HPVワクチンを含む健康情報等の共有のされ方や、それが意思決定・行動変容が異なること、情報伝達・入手手段として使用するSNSの種類などに有意な差があること、同じ健康情報でもSNSで友人等に共有するかどうかに差があることも判明した。また、実際の接種率データも入手し、全国における2022年度までの各生まれ年度ごとの累積接種率は把握できている。 今後は、情報共有が接種率に与える影響、今後の接種率の変化が生涯の子宮頸癌罹患リスクに与える影響などをシミュレーションしていく。 さらに、並行して、これまでに開発しているAgent- based simulation手法による、仮想空間におけるHPV感染伝播のシミュレーションを継続し、HPVワクチン接種によるHPV感染減少などのシミュレーションへの活用のための精度向上も図る。
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[Journal Article] Effectiveness of catch-up and routine program of the 9-valent vaccine on cervical cancer risk reduction in Japan.2024
Author(s)
Yagi A, Nakagawa S, Ueda Y, Oka E, Ikeda S, Kakuda M, Kobayashi E, Ito Y, Katayama K, Hirai K, Nakayama T, Kimura T.
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Journal Title
Cancer Sci.
Volume: 115
Pages: 916-925
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Intentions for catch-up HPV vaccination in Japan: an internet survey.2023
Author(s)
Nakagawa S, Yagi A, Ueda Y, Ikeda S, Kakuda M, Hiramatsu K, Miyoshi A, Kimura T, Hirai K, Sekine M, Nakayama T, Kobayashi E, Miyagi E, Enomoto T, Kimura T.
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Journal Title
Int J Clin Oncol.
Volume: 28
Pages: 1667-1679
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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