2023 Fiscal Year Annual Research Report
PDX モデルマウスとオミックス解析を用いた希少がん保存バンクの設立
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22H03226
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木村 正 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (90240845)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澤田 健二郎 大阪大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (00452392)
中村 幸司 大阪大学, 大学院医学系研究科, 招へい教員 (00900151)
小玉 美智子 大阪大学, 大学院医学系研究科, 講師 (70791391)
木瀬 康人 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (90778531)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 希少癌 / PDXモデルマウス / 中腎管様癌 / Trametinib / Omipalisib |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は希少癌である中腎管様癌(MLA)に焦点をあてた研究を行った。まず臨床検体から手術時に採取した組織を用いて婦人科がん同所移植PDXモデルマウスを5継代以上作成し、PDX腫瘍のHistologyがOriginal tumorと近いことを確認した。さらにMLAに特異的に効果のある治療法を探索するために、Original tumorよりWhole exome sequencingを行い、KRASとPIK3CAに病的変異を確認した。さらにPDX腫瘍を用いたPatient-derived explant(PDE、薄切したPDX腫瘍片をGelatin sponge上で72時間培養)するEx vivoの系にて抗腫瘍効果を評価しTrametinib(MEK阻害剤)、Omipalisib(PI3K/mTOR阻害剤)のMLA腫瘍への治療効果を確認した。PDX腫瘍を用いた3次元オルガノイド培養(PDX腫瘍を細切、酵素処理したのち、Magnet beadsでヒト腫瘍細胞のみを回収、Matrigel dome内で72時間3次元培養)でも抗腫瘍効果を評価しTrametinib、OmipalisibがDose-dependentに効果を示し、両者の併用療法は単剤に比べて強い効果を認めることを確認した。 同所移植PDXモデルマウスを用いたIn vivo の実験系も作成し、TrametinibとOmipalisibの併用療法は既存の化学療法CBDCAとともに抗腫瘍効果を示した。 以上作成したMLA希少癌実験系を用いて、新規治療薬の検討を行い、その有用性を確認した。一連の成果は2024年の第76回日本産科婦人科学会学術講演会で口頭発表した。現在、論文作成中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要で述べたように、令和5年度は作成したMLAのPDXモデルマウスを用いて、詳細な検討を行った。In vitro、In vivoの実験を行い、希少癌であるがゆえに標準治療が存在しないMLAの治療薬として、TrametinibやOmipalisib、が有効である可能性を提示した。また、この一年間で、PDXモデルマウスを20例作成することができた。さらに75%の15例でPDXマウスの継体を行うことができ、研究を重ねることで実験系を確立することができた。従って、一定の研究の進捗はあったものと考える。ただし、どうしても希少癌の発症頻度は少なく、希少癌のPDXモデルの作成は数例にとどまってしまったため、“(3)やや遅れている”と判断した。従って、令和6年度以降はさらに人員を確保し、さらなる症例の集積に努める予定にしている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続いて、希少がんPDX モデルマウスの作成、継代を行う。上述したMLAモデルマウスに関しては、研究成果をまとめ、論文投稿する。令和6年度は卵巣皮様嚢腫から発生する扁平上皮癌のPDXモデルマウスを作成しており、これを用いた研究を中心に行う。また、引き続いて大阪大学医学部附属病院で治療を受ける希少婦人科がん症例の腫瘍を手術・生検時に採取する。清潔操作下にてその腫瘍を細切し、全身麻酔下で開腹されたヌードマウスの子宮に移植する。移植された腫瘍は約3-6 か月かけて増大する。そのPDX 腫瘍を触診または経腹超音波にて経時的に観察する。マウス子宮に移植したPDX 腫瘍が超音波による計測で1500 ㎜3 に達した際、もしくは腹膜播種進展・大量腹水産生などでマウスの全身状態が不良となった際には、マウスを安楽死させ、開腹し腹膜播種進展の状況を確認する。さらにそのときに採取した腫瘍を同様に細切し、次のヌードマウスに移植する。それによって、PDX マウスの継代を行う。希少がんの症例ごとにPDXモデルマウスを順次作成していく。 続いて、上述したMLAの時と同様に、作成したPDX モデルマウスの播種、進展に伴うゲノムプロファイリングの変化の解析を行い、腹膜播種進展に伴い生じる遺伝子変化を網羅的に解析する。得られたデータをBioinformatics にて解析し、希少がんの進展において高発現/低発現となるPathway・分子を探索し、未だ明らかになっていない希少がんの播種進展に関わるDriver 遺伝子の同定を行う。
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