2022 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of Inner Ear Development Mechanisms using multi-omics
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22H03234
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kobe City Medical Center General Hospital(First Clinical Division, Second Clinical Division, Third |
Principal Investigator |
山本 典生 地方独立行政法人神戸市民病院機構神戸市立医療センター中央市民病院(第1診療部、第2診療部、第3診療部, 中央市民病院, 部長 (70378644)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松永 麻美 京都大学, 医学研究科, 助教 (00599524)
中川 隆之 京都大学, 医学研究科, 研究員 (50335270)
大西 弘恵 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (50397634)
池川 雅哉 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (60381943)
岡野 高之 京都大学, 医学研究科, 講師 (60642931)
十名 洋介 京都大学, 医学研究科, 助教 (80898073)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 内耳発生 / 網羅的発現解析 / 遺伝子 / タンパク質 / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度にまず行ったのは、マウス内耳の各早期発生段階(胎生9.5日~11.5日)における、細胞の単離を行うプロトコールの確立である。本研究で施行する予定の単一細胞の網羅的遺伝子解析のためには、細胞が完全に1個ずつに単離されていることが必須である。このためには、前処置や単離用の薬剤に何を用いるか、フィルターのサイズ、遠心のプロトコールなどを決定する必要がある。検証の結果、Cell recovery solutionで前処理後に、Accumaxを加えて、20 umのフィルターで処理、薬剤のクリーンアップのために200 g の遠心を3回行う、というプロトコールが、最もdoublet(2個の細胞が1個の細胞用に見える状態)の発生率と細胞死の発生率とのバランスが良かった。 次に、上記プロトコールに基づいて、胎生9.5日~11.5日の1日毎に単離した細胞のラブラリーを作成して、単一細胞を用いたRNAシークエンスを行った。各日のサンプルからは、3500から7000個の単一細胞を単離することができた。各日のサンプルの1細胞当たり遺伝子数は、5500から6300と、以前我々が、公開されている全身のマウス胎児単一細胞遺伝子網羅的解析のデータから内耳上皮のみを抽出して行った解析の際の614よりはるかに多くの遺伝子のシークエンスを得ることができた。 また、先行研究で同定していた内耳発生に重要と思われる遺伝子のうち、Early B cell factor 1(Ebf1)について、内耳発生期における発現量の検定を定量的RT-PCRを用いて行った。その結果、発生期間中全般に発現は認めるが、胎生13.5日での発現量が最も多いことが分かった。In situ hybridizationによる、内耳発生期における局在の検討も行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各発生段階のマウス蝸牛の単一細胞化手法の確立を年度の前半中に行い、プロトコールが確立し次第RNA-seqとデータの解析を行う予定であった。また、後半にはCHIP-seqも施行する予定であった。しかし、単一細胞化手法の確立の条件検討にかなりの時間を要したため、RNA-seqの施行が年度後半にずれこんだ。その後、データ解析をはじめているが、CHIP-seqの施行には至っていない。ただ、確立した単一細胞単離のプロトコールは極めて良好なもので、非常に多くの単一細胞(合計で2万個)の細胞を得ることができ、1細胞当たりに検出できた遺伝子数も5000を超えている。データの取得は終了しているが、発生期内耳の単一細胞遺伝子網羅的発現解析は良質なサンプルからライブラリーの作成、RNAシークエンスを行うことができたので、十分な解析ができると考えられる。 一方、内耳発生に重要な役割を果たす遺伝子候補の検討は、マウス胎児全身の単一細胞網羅的遺伝子発現解析の公開データを用いて内耳上皮細胞の再解析を行った先行研究で同定した候補を検証している。そのうち、basic helix loop helix型転写因子で、Bリンパ球や嗅上皮の発生に重要な役割を果たしていることが知られているEbf1が、内耳の感覚上皮に多く発現していることが予想されたので、内耳内での発現や機能に関する検討を行っている。2022年度は、定量的RT-PCRを用いた内耳発生期各段階における発現レベルの検証データがそろい、さらにin situ hybridizationを行うためのプローブのコンストラクトが完了したので、これを用いて局在の検討を開始した。Ebf1の内耳内の部位特異的な発現も認められ、順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、まず、2022年度に行ったRNAシークエンスの結果解析を行う。具体的には、取得データの前処理、次元削減、クラスタリングによって、今まで記載されていなかった新規の細胞の集団がないかを検証する。また、偽時系列解も行うことによって、未知のクラスターが、どのような細胞集団かの予想も行う。さらに、各クラスターに特異的な遺伝子の検出を行って、各発生段階での細胞運命決定、各種細胞のマーカーとなる分子を同定する。Ebf1については、in situ hybridizationに加えて、抗体による免疫染色も行って、各発生段階でどのような細胞がEbf1を発現しているかを解析する。また、Ebf1のノックアウトマウスを入手して、その内耳における表現型の解析を行う。マウスが胎生致死の場合は、ノックアウトマウスにおける内耳の形態のみを記載することになるが、生後も生存するようならば、聴性脳幹反応や歪音耳音響放射検査などによる聴力の評価を行う。また、胎生致死の場合は内耳特異的なコンディショナルノックアウトを行って、生後のマウスの内耳形態の解析に加えて、Ebf1の欠失が聴力に及ぼす影響を検証できるようにする。さらに、新しい解析として、質量分析を用いて内耳において発現するタンパク質や脂質や糖脂質、その他の小分子を同定する手法の確立を行う。具体的には、発生期内耳蝸牛切片からレーザーマイクロダイセクションを用いて、特定の部位を切り出して抽出した試料を用いて、MALDI法による質量分析をおこなったり、切片そのものを用いて、イメージング質量分析を施行したりするための、プロトコールを策定する。
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Research Products
(2 results)