2022 Fiscal Year Annual Research Report
臨床倫理的問題の判断メカニズムの解明および倫理理論構築と新アプローチ法の確立
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22H03306
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
瀧本 禎之 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 准教授 (00396699)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 真 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (30536488)
長尾 式子 北里大学, 看護学部, 教授 (40396700)
安村 明 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 准教授 (60723468)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 臨床倫理 / 脳機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、臨床倫理的ジレンマに対する比較考量時の脳機能測定を行うために、①fNIRSのセットアップ②臨床倫理的ジレンマタスクの作成と事前調査③理論研究の準備、の3点を行なった。内容は以下の通りである。 ①本年度は、臨床倫理的ジレンマに対する脳機能調査のための環境の構築を行った。特に、本研究で使用する機能的近赤外分光法(fNIRS)に対応した情動を惹起させる文章刺激のモデルを作成し、予備実験を行った。今後、作成した課題を遂行中の前頭前野の賦活量をfNIRSにより計測する。得られたデータから、自動反応の首座としての腹側前頭前野および制御反応としての背側前頭前野の賦活量を比較し、臨床経験等の属性と脳機能との関連性を検討する予定である。 ②本年度は、過去の臨床倫理コンサルテーションの依頼を受けた事例を参照しつつ、臨床倫理専門家3人による6回のミーティングを経て、ジレンマが大きく態度が分かれそうな2択形式の臨床倫理的ジレンマタスク60問を作成した。この60問を、医師、看護師、400名ずつを対象に調査を行い、回答傾向の評価を行なった。幾つかのジレンマタスクでは、医師と看護師において回答傾向が異なるタスクが確認された。来年度は、この60問から実際に使用するジレンマタスクを20問選定することを行う予定である。 ③本年度の理論研究は、作為と不作為、殺すことと死ぬに任せることの区別に関わるプロセスに着目した。作為と不作為、殺すことと死ぬに任せることの区別は、行為の倫理評価の根拠というより、人々の倫理的見解によって後付けされるものだと示唆された。このような判断傾向の背後には、情動の影響がある可能性が考えられた。これらは、私たちの因果判断とそれにかかわる区別が、倫理的評価の根拠となるというよりもそれを前提として後付けされるというノーブ効果として説明されると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、ジレンマタスクの作成と医師および看護師に対する調査を実施することができた。一方で、学生に対する調査は遂行できていない。また、脳機能の測定のセットアップおよび理論研究も予定通り進行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
fNIRSのセットアップを進め、測定実施する研究室にfNIRSを設置するとともに、fNIRS測定のための研究補助者の雇用を進めていく。また、fMRIでの測定を想定して、測定場所の確保を進めていく予定である。
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