2022 Fiscal Year Annual Research Report
行動変容のビッグデータ解析による感染症流行予測の革新
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22H03345
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大森 亮介 北海道大学, 人獣共通感染症国際共同研究所, 准教授 (10746952)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | ビックデータ / 感染症疫学 / 数理モデル / 行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
観光旅行といった長期的な計画のキャンセルは、旅行の直前だけでなく、計画立案以降の流行状況や介入の状況が関与していると考えられる。しかしながら、携帯電話の位置情報データだけでは、どの時点での流行状況や介入の状況が行動変容を促したのかは直接的にはわからない。そこで、旅行予約サイトにおける宿泊施設の予約の発生およびキャンセルのデータを解析した。旅行予約サイトのデータのような直接的に行動変容が抽出できるデータを数理モデルで解析した例は今までになく、世界で初めて詳細に行動変容を定量化することとなる。本年度は、宿泊施設の予約および予約のキャンセルの発生プロセスの数理モデルを構築した。宿泊施設の予約数は予約の発生によって増え、キャンセルによって減少する現象である。さらに、予約の発生およびキャンセルは流行の状況(行政の介入の状況と陽性者数)に応じて変化すると考える。宿泊施設の予約を指数関数の加法モデルとみなした数理モデルを構築し、旅行予約サイトにおける宿泊施設の予約の発生およびキャンセルのデータをフィッティングさせたところ、予約に関しては5個の、キャンセルに関しては6個の指数関数の和で表現することが最適であることが判明した。また、一部屋あたりの客数は予約とキャンセル両方に、シングル、家族といったゲストタイプと滞在期間が予約の発生ダイナミクスに大きな影響を与えていることが判明した。これらの解析により、コロナウイルス流行前の宿泊施設の予約およびキャンセルの発生を予測する基本の数理モデルの構築に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全く計画通りの進行状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
行動変容を記録したデータは、宿泊施設の予約データだけではない。携帯電話の位置情報データは、携帯電話アプリケーションの利用者より許諾を得て取得したGPSによる位置情報を統計的に加工した人の流れを把握することができるデータである個人レベルでの携帯電話の位置情報データから、携帯電話の所有者のの行動が行われた場所が記録されたビッグデータである。このデータを統計モデルにあてはめ、各地域・各週のそれぞれの行動頻度を最も説明できるような係数を最尤推定する。構築された数理モデルと、宿泊施設の予約キャンセルの数理モデルを比較し、宿泊施設予約キャンセルと、携帯電話の位置情報データとの関係性を探ることで、宿泊施設予約行動が行動変容全体と比較した場合にどの程度一般性を有するか検証する。また、行政の介入や新規陽性者数が携帯電話の位置情報データで記録された行動変容にどの程度貢献したかを明らかにする。行政の介入は都道府県独自の要請により地域や時期によって異なるため、都道府県独自の要請等も考慮する。さらに、感染リスクは様々な行動のうち、不要不急の行動が行動変容に対して介入の効果が大きいと予想されるが、その行動変容には大きなバリエーションが予想される。この行動変容のバリエーションを理解するための解析を行う。不要不急の行動について宿泊を伴う行動と伴わない行動に分け、それぞれについて行政の介入や新規陽性者数と行動変容の関係性を定量化し、行動変容のバリエーションを解析することで、行動変容を理解する。
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