2023 Fiscal Year Annual Research Report
筋損傷に対する筋内リンパ管の役割とその役割に着目した治療戦略
Project/Area Number |
22H03440
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
河上 敬介 大分大学, 福祉健康科学部, 教授 (60195047)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
縣 信秀 常葉大学, 保健医療学部, 准教授 (00549313)
紀 瑞成 大分大学, 福祉健康科学部, 准教授 (60305034)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 筋損傷 / 筋再生 / リンパ管 / 毛細血管 / 伸長刺激 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,筋損傷からの回復における筋内リンパ管の形態応答のメカニズムを組織学的、免疫組織学的そして生化学的に明らかにし,筋損傷におけるリンパ管の役割を解明することである.さらに,このリンパ管の役割に着目して,効果的な理学療法を探ることである.具体的には,まず筋損傷時のリンパ管形態応答とその分子機構の解明を行う.次に筋損傷からの回復におけるリンパ管の役割の解明を行う.そして,リンパ管の役割に着目して,主に力学刺激を用いた効果的な理学療法の解明を行う. そこで令和5年度は、マウス前脛骨筋に対して損傷筋線維の割合が±5%の精度で作られた筋損傷モデルを用い、昨年度から取り掛かった、筋損傷からの回復過程におけるリンパ管新生に関わる情報伝達系について例数を増やして検証した。その結果、他の組織の癌細胞増殖や組織損傷後と同様のVEGF-C/-D、VEGFR-3が関与していることが判明した。またその上流には主に炎症性マクロファージから放出するTNF-α や IL-1βが関与していることがうかがえる結果を得た。これから更なる検証も必要であるが、組織学的検証にも照らし合わせて推察すると、これらのシグナル分子の活性は損傷2-3日目に強くなることが考えられた。本結果には、更に非炎症性マクロファージやそのサイトカインであるIL-10等の検証も進めていく必要がある事が判明した。更に次年度行う予定である理学療法の選定を行った。その結果、まず定量的刺激が可能で損傷からの回復促進効果が期待できる伸長刺激を用いての検証が適切であることが判明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
筋損傷からの回復過程に、他の組織の癌細胞増殖や組織損傷後と同様のVEGF-C/-D、VEGFR-3が関与していることが判明した。また、このシグナル伝達系に、炎症性マクロファージや非炎症性マクロファージから放出されるサイトカインの関与がうかがえた。さらに、次年度実施予定の伸長刺激の量や頻度について、検証を開始できたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和5年度までに、筋損傷からの回復過程における、リンパ管や毛細血管の動態及びそのシグナル伝達系について十分に検証されていなかった点を解明する。特に、非炎症性マクロファージやそのサイトカインについて明らかにする。そして、筋損傷からの回復過程における、リンパ管や毛細血管の動態及びそのシグナル伝達系の全容を明らかにする。生化学的検証では、Real time RT-PCR法を用いてリンパ管新生因子およびその上流の炎症性細胞のサイトカインのmRNA発現量を解析する。なお、リンパ管内皮細胞マーカーである抗LYVE-1抗体を用いて免疫組織化学染色を行い、リンパ管数を測定後、筋線維1本当たりのリンパ管・血管数を算出する。 また昨年度行った理学療法の選定の結果をふまえ、定量的刺激が可能で、損傷からの回復促進効果が期待できる伸長刺激を用いて、頻度や強度を変えながらその効果を検証する。なお強度は、筋に張力を加えたときの応力を基に、最適な強度に迫る。組織学的評価は、筋線維の再生と、炎症性マクロファージや非炎症性マクロファージの集積、リンパ管や毛細血管の密度の変化の解析により行う。また生化学的評価は、各マクロファージから放出するサイトカインやリンパ管成長因子のmRNA発現量の解析により行う。
|