2022 Fiscal Year Annual Research Report
BMI、脳刺激法、AIを融合したテーラーメイド型嚥下機能再建法とその神経基盤解明
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22H03452
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
前澤 仁志 関西医科大学, リハビリテーション学部, 准教授 (80567727)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平田 雅之 大阪大学, 大学院医学系研究科, 特任教授(常勤) (30372626)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 誤嚥 / 嚥下機能 / 脳機能解析 / 周波数解析 / ブレイン・マシーン・インターフェース / 随意運動 / 機会学習 / AI |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題において、健常者や高齢者の摂食嚥下機能の中枢制御機構ならびに嚥下機能向上に結びつく下記の成果を得た。 反復舌運動時の舌運動と脳反応との相関を解析するため、脳反応―運動コヒーレンス解析(Cortico-kinematic coherence, CKC)を全頭型脳磁図計測装置を用いて試みた。従来のCKC解析手法では、加速度計測装置を対象とする身体部位に設置し運動を評価している。しかし、磁性体である加速度計を口腔領域に設置するとアーチファクトを生じるという欠点があった。そこで、 我々は、ビデオカメラを用いて撮像した舌運動をAI(機械学習)技術を駆使しキャプチャーモーション解析し、脳反応―舌運動コヒーレンスの解析を行った。舌運動と脳反応とのコヒーレンスは両側半球に認められ、電流源は舌感覚運動野に同定された(Maezawa et al., 2022)。本CKC手法は、電極などを口腔内に設置する必要がなく、誤嚥や感染のリスクがないという利点を有し、有効な脳機能解析手法である。また、多点を同時に評価することが可能であり、今後は嚥下時における顎顔面領域と脳信号とのコヒーレンス解析により嚥下機能の時間空間情報処理機構をより詳細に検討したい。さらに、高齢の歌唱経験者55人と非歌唱経験者141人を対象に反復唾液嚥下テストによる嚥下機能評価を行った。その結果、歌唱経験者では非歌唱経験者に比べて有意に反復唾液嚥下回数が上昇しており、歌唱トレーニングの嚥下機能維持への可能性が示唆された(Yagi et al., 2022)。これらの研究成果は、高齢者の嚥下機能制御機構解明に寄与するものである。さらに、舌運動障害の患者における新規脳刺激法を用いたアプローチを総説して報告した(Maezawa et al, 2022)。我々が開発した嚥下機能評価法や口腔運動時脳機能解析法を有機的に融合し、2023年度以降、新規嚥下機能再建法の確立に臨床応用する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
健常者の摂食嚥下機能の中枢制御機構解明ならびに高齢者の嚥下機能向上に結びつく下記の成果を得ており、研究はおおむね順調に遂行できている。本研究課題において、脳機能解析と機械学習とを組み合わせた新たな脳機能解析手法を確立することで、舌随意運動を行う際の大脳皮質の時間空間情報処理機構を明らかにした(Maezawa et al., Scientific Reports, 2022)。また、高齢者を対象に歌唱経験者55人と非歌唱経験者141人の嚥下機能を解析し、歌唱トレーニングと嚥下機能との関連について明らかにした。この研究では、歌唱トレーニングの嚥下機能維持への有効性を支持する結果を得た(Yagi et al., Healthcare, 2022)。さらに、両側運動野への経頭蓋電気刺激法を用いた舌運動障害に対する新規治療法に関する論文を報告した(Maezawa et al., Toxin, 2022)。また、健常者25名を対象に舌随意運動時の事象関連脱同期・同期反応の計測を行い、現在解析を行っている。次年度以降には、学会発表や論文化を目指している。今後、我々が開発した嚥下機能評価法や口腔運動時脳機能解析法を有機的に融合し、新規嚥下機能再建法の確立に臨床応用する。
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Strategy for Future Research Activity |
嚥下運動は1 秒程度の短時間に口腔咽頭領域の20 種類以上の筋が一定の順序で作動する極めて精緻かつ複雑な運動機能である。2023年度に計測を行った舌随意運動時における時間周波数特性を明らかにしたい。また、我々は本研究課題にて多点同時評価可能な“機械学習を用いたキャプチャーモーションによる口腔運動―脳信号コヒーレンス解析手法”を開発した。今後はこの手法を応用し、嚥下運動3相(先行期、口腔咽頭期、食道期)を各相別に区別し、嚥下時にはどのタイミング(時間)でどの皮質領域(空間)の活動が関与するのかを詳細に明らかにし、精緻な摂食嚥下機能の脳内制御機構を明らかにしたい。また、歌唱経験者を対象とした嚥下機能解析により、高齢者において歌唱トレーニングが嚥下機能維持に有効であるという結果を得た。今後は、高齢者の嚥下機能維持に効果的な歌唱訓練法を開発したい。さらに、歌唱経験者を対象に嚥下時の脳磁図計測を行うことで、歌唱トレーニングがどのように口腔咽頭領域(末梢)や皮質領域(中枢)に影響し嚥下機能維持に作用するのかを明らかにし、歌唱による嚥下機能維持のニューロエビデンスを解明する。
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