2022 Fiscal Year Annual Research Report
アスリートにおける「能動視覚」の機構解明とバイオマーカーの開発
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22H03492
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小野 誠司 筑波大学, 体育系, 教授 (70754753)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 健一郎 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 精神疾患病態研究部, 室長 (20362535)
木塚 朝博 筑波大学, 体育系, 教授 (30323281)
宮本 健史 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(PD) (80912526)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 能動視覚 / 眼球運動 / 視覚情報処理 / アスリート / 脳機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
アスリートに必要な視覚情報処理として、受動的に知覚するだけでなく、対象となる視標(ボールや相手など)の速度やその変化を把握・予測して自分の動作を発現・修正するという動くための視覚(能動視覚)を養うことが重要である。そこで本研究は、能動的な視覚情報処理を担う高次脳機能に着目し、MRIおよび脳波を用いて機能解明を目指すこと、さらにその脳機能を反映する眼球運動の動態を指標として、アスリートの持つ優れた能動視覚を評価する新たなバイオマーカーを開発することを目的とする。そのため、次に示す3段階の研究を進め目的の達成を目指す。まず、アスリートの眼球運動および視覚反応を定量化し、その特徴を機能的MRIおよび脳波計測を用いた背側視覚路と大脳皮質前頭野(前頭眼野)の機能から検証し、さらに、眼球運動、視覚反応動作に反映される能動視覚と脳機能の関連性を検証する。 初年度は、異なる競技特性および競技レベルのアスリートを対象として、実践的な運動課題および視覚刺激に対する眼球運動を用いて能動的な視覚情報処理の能力を比較する。その際、眼球運動および頭部運動の開始局面の加速度、速度、視標の動きに対する眼球運動の開始時間(潜時)を分析することによって比較検討する。さらに、同様の視覚刺激に対する視覚反応動作(反応時間課題)、筋電図を計測し、それに先行して起こる滑動性眼球運動(パーシュート)動態の関係を検証し、能動視覚の評価に関する基礎的、実証的な知見を得る。得られた結果を基にして、異なる研究対象者における特性を明らかにし、特に球技系アスリートの持つ優れた能動視覚を評価する新たな指標の開発につなげる。さらに、アスリートにおける競技特性と視覚刺激に対する眼球運動の関連性について検証することで、異なる競技特性や競技レベルのアスリートの持つ視覚情報処理機能の解明につなげるための知見を得る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に予定した実践に即した視覚運動課題および視覚刺激を用いた眼球運動の計測とその個人差について、アスリートを含む異なる対象者の特徴を明らかにする基礎的知見を得るための研究は比較的順調に進展した。ここまでは個々の違いや異なる運動経験や競技レベルの対象者群における違いを明らかにすることができたため、これらの特徴の違いが視覚情報処理に関連する脳活動に起因しているかについて脳波による事象関連脳電位およびMRIを用いた脳機能の関連性を踏まえた検討を開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
視覚刺激に対する眼球運動の動態が背側視覚経路の脳活動と関連すること、ヒトの視覚認知の違いが前頭眼野の働きに影響されることから、次年度は異なる競技経験を持つアスリートを対象として、パフォーマンスに関連する視覚認知能力の違いが事象関連電位およびMRIから読み取る脳機能に反映されるかどうかについての検証を開始する計画である。異なる視標の速度や方向の視覚刺激に対しての視覚認知や眼球運動が顕著に異なる場合は、視覚刺激に対する大脳皮質の背側視覚路や前頭眼野に関連する機能に違いが生じる可能性がある。したがって、視標の提示時点および特定の眼球運動をトリガーにした脳電位を記録することにより、視覚認知や眼球運動と関連した脳活動の評価を試みる。この手法を用いて、アスリートと非アスリート群の眼球運動と脳機能を比較することによって競技特性を含めたアスリートの持つ視覚認知能力の特性を明らかにする計画である。
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