2023 Fiscal Year Annual Research Report
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22H03510
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
金子 賢太朗 明治大学, 農学部, 専任講師 (30636999)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 脂質の質 / 脂質構造 / レプチン / 視床下部 / レプチン感受性障害 / 肥満 |
Outline of Annual Research Achievements |
成人では高脂肪食の摂取により脳機能(エネルギー代謝・糖代謝恒常性維持機能や認知機能、ホルモン感受性など)が障害され、肥満や糖尿病、認知機能障害などを誘発する。しかし、母乳も高脂肪であることが知られている。そこで本研究では、脂質摂取には大きな矛盾があるものと想定し、さまざまな脂質構造の自然界油脂を用いることで、生体が脂質構造をどのように認識しているのか明らかにすることを目的とした。昨年度は、脂質の違いと生体の相互作用を解明するため、構造の異なるさまざまな自然界油脂を用いた高脂質食(45 kcal%fat)を作製することで、マウス個体における体重、エネルギー代謝、各種行動における影響を解析した。牛脂、牛酪、豚脂、パーム油などの油脂を高含有させた高脂肪食をマウス個体に給餌した結果、体重増加量に有意な差が生じることを明らかにし、エネルギー代謝解析の結果、呼吸商が異なることを見出した。そこで本年度は、更なる原因解明に向け、生体内の重要な抗肥満ホルモンであるレプチンに着目した検討を実施した。その結果、過栄養状態であっても中枢投与したレプチンによる抗肥満効果(体重減少や摂食抑制)が発揮されやすい脂質、レプチン抵抗性を誘導する脂質が存在することを見出した。さらに新たな脂質食(30 kcal%fat)を作製することによって、脂質摂取割合の影響について検討したところ、視床下部レプチン感受性に大きな差が生じ、30 kcal%fatにおいても同じ結果を生じることを確認した。本結果より、食餌に含まれる脂質構造の違いによって、同じ摂取カロリーであっても生体のホルモン感受性制御における役割が異なっていることが示され、正常体重の維持や肥満症の制御に適した脂質の存在が示唆された。来年度も引き続き、さまざまな脂質構造を用いた研究により、代謝、食欲、行動、学習、運動、睡眠等の生体機能を標的とした研究を遂行する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
食品中脂質の主成分であるトリアシルグリセロールにおいて、脂肪酸組成や結合位置の違いが油脂の性質を決めているが、個体における摂取した脂質の構造認識実態を体系的に調べた研究は少ない。そこで本研究では、さまざまな自然界油脂を高含有させた特殊高脂肪食を作製し、マウス個体に給餌することによって、エネルギー代謝、体重、食欲、血糖値、情動行動、認知学習、運動、睡眠等の生体機能を標的とした研究を遂行した。本年度の進捗状況としては、脂肪酸組成が比較的類似している動物性油脂である牛脂と豚脂を中心とした研究を進め、特に、過栄養状態(45 kcal%fat)における視床下部の摂食抑制ホルモンであるレプチンの感受性に及ぼす脂質の質の解析を進めた。その結果、摂取カロリーが変わらない過栄養状態であるにも関わらず、レプチンの中枢投与による体重減少効果、摂食抑制効果が摂取した脂質によって大きく異なることを明らかにした。そこで次に、新たな脂質食(30 kcal%fat)を作製することによって脂質摂取割合の影響についての検討も行ったところ、脂質摂取割合が変わっているにも関わらず、特定の脂質摂取により視床下部レプチン感受性が高く維持されることを明らかにした。さらにこのレプチン感受性制御にはレプチンシグナルの負の制御因子であるSOCS-3発現量の差が関与していることが示唆された。以上より、摂取カロリーが同じであっても異なる自然界油脂の摂取によって、体重増加やエネルギー代謝、糖代謝に与える影響が異なり、その違いには視床下部におけるホルモン感受性に及ぼす影響が異なっていることが原因であることが示唆された。さらに本研究では、不安様行動試験においても、摂取した脂質の違いによって、脂質摂取割合が異なっていても精神的外レス緩和作用が変わってくることも確認しており、本研究がおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の検討結果より、さまざまな自然界油脂を含有した特殊脂質食をマウス個体に給餌することにより、抗肥満ホルモンであるレプチンの視床下部における感受性が大きく異なることを明らかにし、過栄養状態においても視床下部レプチン感受性を正に保ちやすい油脂、負に誘導する油脂が存在することを明らかにした。さらには、高架式十字迷路およびオープンフィールドを用いた不安様行動試験においても、脂質摂取割合に関係なく、精神的ストレス緩和作用を発揮しやすい油脂が存在することを確認した。そこで次年度の検討においては、引き続き特殊脂質食を用いた研究を進め、代謝、食欲、行動、学習、運動、睡眠等の脳機能を標的とした研究を遂行する。さらには、摂取した油脂の違いが消化管におけるホルモン分泌に及ぼす影響、末梢組織での代謝に与える影響についても解析を進める。
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