2023 Fiscal Year Annual Research Report
道具への力のかけ方に着目した身体技能メカニズムの解明
Project/Area Number |
22H03674
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
阪口 豊 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (40205737)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西井 淳 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (00242040)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 身体技能 / 身体計測 / 力計測 / 道具 / 楽器演奏 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では, 本研究の目的は,楽器演奏技能を例題として,技能動作における人(奏者)と道具(楽器)のあいだの力のやりとりを多点計測し,「力の空間」における身体技能メカニズムを明らかにすることである.具体的には,ヴァイオリン(本体・弓)およびピアノ鍵盤に小型3軸力センサを組み込んで楽器と身体の複数接点における力の分布を計測し,計測データより身体の遣い方の構造を解析する方法を構築する.今年度の成果は以下のとおりである. 本年度は,昨年度に引き続き実験用楽器の製作を進めるとともに,試作した装置を用いて試験的な実験を行い,そのデータを外部発表した.ピアノについては,1オクターブ13鍵盤へのMEMS力センサおよび鍵盤位置センサの組み込みが終わり,予備的実験を行いながら本実験の具体化を進めた.ヴァイオリンの楽器本体については,昨年度自作した指板下センサの知見に基づき,指板下に埋め込む荷重センサモジュールセンサを外部業者に発注し,その楽器への組み込みを行ったところである.ヴァイオリンの弓については,3Dプリンタを利用して指と弓の接点箇所に力センサを組み込む部分の試作を繰り返したが,弓材との接合や部材の強度などの点ですべての問題を解決できず,完成には至らなかった. また,昨年度に引き続き,ピアノ演奏における上肢・手指の動作解析の一つとして,様々なリズムパタンでタッピングを行う課題においてタッピング時の運動軌道の解析を行った.今年度は,異なる時間間隔のタッピングを交互に行う必要がある場合に二つのタッピング軌道が相互に影響している可能性について実験的に検討し,その可能性を示唆する予備的な実験データを得た.今後,さらに分析を行い,手指運動の相互作用の特性について検討したい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概要で述べたように,楽器にかかる力を計測するための実験用ピアノおよびヴァイオリンの製作はほぼ完成しており,実験用弓の製作を除いて概ね計画調書に記したスケジュールのとおりに研究を進めることができている.なお,ピアノ鍵盤に埋め込む力センサについては,計画段階で想定していた20ミリ角の大きさのストレインゲージ型センサではなく,ヴァイオリンセンサに組み込んだものと同じ8ミリ角の大きさのMEMSセンサを採用した.採用したMEMSセンサの特性上の制約からサンプリング周波数が300 Hz程度に下がってしまう短所はあるが,ストレインゲージ型センサで必要だった外部アンプが不要になったほか,白鍵だけでなく黒鍵鍵盤にも支障なく力センサを埋め込むことができ,当初想定していたものと比較してより演奏実験をやりやすい実験装置を組み立てることができた. 一方で,実験装置の組み込みや調整が予定よりも遅れたために,奏者を対象とした行動実験を行うには至っておらず,実験実施についてはやや進捗状況が遅れている.演奏実験を早く開始して,データの解析と成果発表に進むことが現在の課題である.
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Strategy for Future Research Activity |
実験楽器本体については昨年度までに実装がほぼ終わったことから,本年度は奏者を対象とした実験を開始することに注力する.特に,ピアノについては,トレモロやアルペジオなど,手と指がそれぞれの役割を担っているような演奏動作に着目して,鍵盤にかかる3次元力から手や指の働きを推定する検討を始めたい.ヴァイオリン弓については,まずは上記の実装上の問題を解決し,奏者が実験用弓を保持して楽器を演奏できる状態にしたうえで,奏者を対象にした実験を始める.また,実装した実験用楽器について,その開発内容について論文発表や特許出願を行う予定である. このほか,異なる音価の音符が混在する打鍵等の動作における運動軌道を,個々の音価を実現するための運動と比較することにより,運動の基本要素をいかに結合させて複雑なリズム運動を実現しているか検討する予定である
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