2023 Fiscal Year Annual Research Report
Can a combination of cofactor-binding prediction and experimental validation identify uncharacterized enzymes?
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22H03690
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nagahama Institute of Bio-Science and Technology |
Principal Investigator |
塩生 真史 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 准教授 (30345847)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
向 由起夫 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 教授 (60252615)
中村 卓 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 准教授 (80344050)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 機能アノテーション / 機械学習 / 結合アッセイ / メタボローム解析 / X線結晶構造解析 / 出芽酵母 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、様々な生物種に多数存在する機能未知タンパク質の中から、特に未同定の酵素を明らかにすることを目的とし、酵素活性に必要な補因子の結合予測モデルであるProLMS-GNNの構築、および、それにより結合が予測されたタンパク質について、結合の確認および出芽酵母を実験モデルとした細胞内代謝への関与の確認を実施することを計画している。2023年度は、以下のことを行った。 1. ProLMS-GNNは機械学習により結合予測モデルを構築しているが、タンパク質との複合体構造データの少ない補因子は、学習できるデータの不足から、これまでに用いていた学習方法では精度の良い結合予測モデルの構築が難しかった。そのため、ピリドキサール5’-リン酸(PLP)との結合予測をテストケースとし、Few-shot learningで用いられている転移学習や自己蒸留を応用した学習を行うことで、過去に構築した結合予測モデルよりも予測精度を改善できた。また、酵素活性に関わる15種類の金属イオンの結合予測モデルも構築した。 2. ProLMS-GNNによりPLPとの結合が予測された出芽酵母の機能未知タンパク質であるFmp41とYnl011cのうち、Fmp41についてPLPとの複合体構造を決定するためにX線結晶構造解析を行った。酢酸バッファーにおける共結晶のX線結晶構造解析を行ったところ、PLPそのものの電子密度は確認できなかったものの、リン酸が脱離したピリジン環に相当する大きさの電子密度が確認できた。 3.FMP41とYNL011C遺伝子破壊株と過剰発現株のトランスクリプトーム解析を行ったが、代謝に関係する遺伝子の顕著な転写変動は観察されなかった。一方で、メタボローム解析の結果、FMP41遺伝子破壊株で減少し、過剰発現株で増加する代謝物およびその逆を示す代謝物をいくつか見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 2023年度までに、酵素活性に関わる補因子のうち、PLP、NAD、FAD、CoAとこれらの類似化合物、さらに、一般的なリガンド結合部位を予測できるモデルを構築し、それらのモデルにより結合予測ができる機能をWebデータベースである「Het-PDB Navi」上に実装している。また、Mg2+やFe3+をはじめとする酵素活性に関わる15種類の金属イオンの結合予測を行うモデルも構築できている。一方で、複合体構造情報が少ない補因子の結合予測モデルについては構築手法の探索に留まっている。 2. ProLMS-GNNによりPLPとの結合が予測された出芽酵母の機能未知タンパク質のうち、Fmp41については2023年度までにPLP結合アッセイ系やX線結晶構造解析によるPLP結合活性の確認を進められているが、Ynl011cについては大腸菌での発現・精製が困難であり、PLP結合活性の検証に至っていない。一方で、2023年度には、金属イオンとの結合が予測される機能未知タンパク質に対して結合活性の確認ができるよう、原子吸光分光光度計を用いた金属イオンの定量化を確立することができている。 3. PLPとの結合が予測されたFmp41とYnl011cについて遺伝子破壊株および過剰発現株が構築できており、2023年度にはFmp41の遺伝子破壊株および過剰発現株におけるメタボローム解析を行うことで、Fmp41が関与する細胞機能の探索を進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 2023年度に構築した金属イオンの結合予測モデルは、現時点では予測精度が非常に低いことが問題となっている。そこで2024年度は、まずは結合予測モデルのアーキテクチャを見直し、さらに2023年度にPLPとの結合予測モデルの予測精度を向上させた学習方法を適用することで、金属イオンとの結合予測の精度の向上を試みる。また、得られた結合予測モデルを出芽酵母の機能未知タンパク質に適用し、金属イオンと結合するタンパク質の候補を選出する。 2. Fmp41に関してはPLP類似化合物(ピリドキシン、ピリドキサミン、ピリドキサール)との共結晶化実験を行い、X線結晶構造解析によりこれら化合物との複合体の立体構造が得られるかを確認する。また、Fmp41とは別にPLPとの結合が予測された機能未知タンパク質であるYnl011cについては、不溶性画分に多く含まれているので、封入体リフォールディングキットを用いて可溶化を試みる。可溶性画分に多くYnl011cが存在する実験条件を確立した後、Fmp41と同様の方法でYnl011cとPLPあるいはその類似化合物との複合体の立体構造を決定する。また、Fmp41およびYnl011cにおけるPLPとの結合定数を、等温滴定カロリメーターによる結合熱の測定で決定できるかを確認する。さらに、原子吸光分光光度計を用いてタンパク質と結合した金属イオンを定量することにより、金属イオン結合タンパク質予測モデルを検証する。 3. FMP41遺伝子の破壊株と過剰発現株において変動が見られる代謝物の情報に基づいてFMP41遺伝子の細胞内代謝への関与について検証する。また、YNL011C遺伝子の遺伝子破壊株および過剰発現株についてメタボローム解析を実施し、Ynl011cタンパク質が機能する代謝反応あるいは代謝経路を探索する。
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