2022 Fiscal Year Annual Research Report
説明可能AIによる1細胞計測大規模ネットワークデータからの知識発見技術の開発
Project/Area Number |
22H03692
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Aichi Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
山口 類 愛知県がんセンター(研究所), システム解析学分野, 分野長 (90380675)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮野 悟 東京医科歯科大学, M&Dデータ科学センター, 特任教授 (50128104)
PARK HEEWON 東京医科歯科大学, M&Dデータ科学センター, 非常勤講師 (70756642)
丸橋 弘治 富士通株式会社(富士通研究所), その他部局等, 研究員 (20417504)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 一細胞計測 / ネットワーク推定 / 説明可能AI |
Outline of Annual Research Achievements |
計測技術の進展により、多種の情報を多様なコンテキストに沿って単一細胞レベルで得られるようになってきた。これらの一細胞計測情報からコンテキストを反映して変化する生体ネットワーク構造の持つ意味を抽出できれば、分化、薬剤感受性等、様々な細胞機能および性質のシステム的理解が進むことが期待される。しかしながら、特に細胞集団が置かれているコンテキストを反映して変化する一細胞ネットワーク推定技術は未開発である。さらに、それらの高次元関係性データから人間が解釈可能な情報を抽出することには、大きな障壁が存在する。本研究の目的は、コンテキストに沿って変化する単一細胞レベルのネットワーク群の推定技術を開発するとともに、大規模ネットワーク群から解釈可能な有用情報を抽出する説明可能AI技術を開発し適用することで、ネットワーク構造の変化の意味を説明しうる深い知識の発見を目指すことである。 今年度は、まず、大規模ネットワーク群から知識抽出を図る説明可能AI技術の開発を進めた。 特に我々が提案した説明可能AI技術であるTRIP法の理論的側面の考察を進め、新たな情報抽出モデルの構成法と推定法の開発を以下のように進めた。あるコンテキストに沿って変化する、多数の要素間の因果関係を表すネットワーク群が大量に得られる状況において、人間が理解可能な情報を抽出することは容易ではない。ここでは、それらの高次元ネットワーク群を生成するモデルとして、低次元の隠れ変数間の因果ネットワークに基づく生成モデルを提案し、またそのパラメータの推定法を開発した。また上記の方法に加え、多数のネットワーク群からの情報抽出法として、ネットワーク群データを用いた判別モデルおよび予測モデルの開発を進めた。さらに単一細胞計測時系列データからネットワーク推定を行い、そこからの情報抽出法の開発を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、コンテキストに沿って変化する単一細胞レベルのネットワーク群の推定技術を開発するとともに、大規模ネットワーク群から解釈可能な有用情報を抽出する説明可能AI技術を開発し適用することで、ネットワーク構造の変化の意味を説明しうる深い知識の発見を目指すことである。本年度は、目的を達成するために、まず大規模ネットワーク群からの説明可能AI技術の開発を進めた。特に、我々が提案した説明可能AI技術であるTRIP法の理論的側面の考察を進め、新たな情報抽出モデルの構成法と推定法の開発を以下のように進めた。あるコンテキストに沿って変化する、多数の要素間の因果構造を表すネットワーク群が得られる状況において、人間が理解可能な情報を抽出することは容易ではない。そこで、人間に理解可能な情報を抽出するために、それらのネットワーク群を、 低次元の隠れ変数間の因果ネットワークに基づき生成するモデルを提案し、パラメータの推定法を開発した。そしてシミュレーションから得られたネットワークデータおよび遺伝子発現ネットワークデータについて適用し性能評価と得られた結果の考察を行った。その 結果を論文にまとめ国際会議に投稿した。並行して、多数のネットワークデータからの情報抽出法として、ネットワークデータを入力とする判別モデルおよび予測モデルを開発し、消化器がんの薬剤感受性に関わる知識抽出につなげ、論文発表につなげた。また、血液がん患者における、一細胞時系列データよりネットワーク推定を行い、性質の違うサブクローン群を同定し、サブクローンネットワーク間の比較に基づき情報抽出を進めた。 以上より、目的達成のための手法の検討および開発は概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度に開発を進めた手法と検討を基に、一細胞計測データからの深い情報抽出法の開発を進める。特に、一細胞データのトラジェクトリ解析情報からの情報抽出を進める。今年度は、主に一細胞の実時間計測データからのネットワーク推定および情報抽出を行ったが、次年度は、一細胞遺伝子発現情報からのトラジェクトリ推定により、細胞の分化や薬剤耐性の違いというコンテキストに沿って細胞群を整列し、低次元空間近傍の細胞群の情報を用いた、コンテキスト依存性のネットワーク群推定法を開発する。一細胞計測データは、近年公開データが充実してきているが、例えば 薬剤耐性能の異なる複数種類の細胞集団のデータ等を対象に開発するネットワーク推定手法を適用することで、薬剤耐性能および細胞種の違いを反映した大量のネットワーク群を推定し、本年度に開発した説明可能AIによる情報抽出を試みる。また、我々はこれまでの研究で、大腸がん患者群における大規模なバルク遺伝子計測から、腫瘍微小環境とサブタイプの関係を見出して来ている。次年度は、それらのサブタイプの検体から一細胞計測データを取得し、開発した手法を適用することで、がんの微小環境に存在する細胞集団の性質についての深い情報抽出を目指す。
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