2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22H03714
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山下 洋平 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (50432224)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮崎 雄三 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (60376655)
入野 智久 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (70332476)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 炭素循環 / 難分解性有機物 / 熱成有機物 / 海洋 |
Outline of Annual Research Achievements |
バイオマスや化石燃料の燃焼などで生じる熱成有機物の大部分は、生物学的反応性に乏しい超難分解性成分であり、地球表層炭素循環から二酸化炭素を隔離する役割を有する。しかし、熱成有機物の末路に関する知見は乏しく、熱成有機物は炭素循環の収支に考慮されていない。これまでの研究により、海洋の溶存有機物画分中に熱成有機物が普遍的に存在すること、その溶存熱成有機物は沈降粒子に吸着し海底へと除去されることが示された。また、溶存熱成有機物の海底への除去フラックスから、海洋には溶存熱成有機物の未知の供給源 (ミッシングソース) が存在することが示された。本研究では、海洋に存在する溶存熱成有機物のミッシングソースとして深海熱水噴出孔および大気沈着に着目し、これらが海洋の溶存熱成有機物の分布やそのプールの動態に与える影響を定量的に解明することを目指す。 深海熱水噴出孔に関しては、北太平洋および南太平洋の東太平洋海膨付近をカバーする海域における溶存熱成有機物の東西および南北断面分布を明らかにし、それらと溶存酸素濃度やヘリウム同位体比の断面分布を比較した。その結果、東太平洋海膨の熱水活動に由来する溶存熱成有機物の濃度を定量化することに成功し、深海熱水由来の溶存熱成有機物の全球フラックスを見積もることができた。また、2022年12月に明神海丘の熱水域において溶存および粒子状の熱成有機物の試料を採取することに成功した。 大気沈着に関しては、北海道大学大学院地球環境科学研究院の屋上にて、2023年8月から大気エアロゾル試料の採取を開始した。予備的な実験および解析を行った結果、大気エアロゾル中の溶存熱成有機物は黒色炭素濃度および水溶性有機炭素濃度と関係することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、当初計画通りに試料採取および化学分析が進んだ。データ解析に関しては、当初計画以上に進み、初年度から原著論文 (Yamashita et al., 2023, Science Advances) を公表し、成果をプレスリリースできるなど、当初の計画以上に研究は進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、試料採取、化学分析およびデータ解析を継続する。熱水噴出孔に関しては当初計画には無かった熱成有機物の溶存化メカニズムの解明を目指し、大気沈着に関しては当初計画通り溶存熱成有機物濃度の制御要因の解明について、継続して研究を展開する。
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Research Products
(7 results)