2022 Fiscal Year Annual Research Report
Development of DNA damage estimation system based on spatial pattern of radiation track structure
Project/Area Number |
22H03744
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松谷 悠佑 北海道大学, 保健科学研究院, 講師 (20826929)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福永 久典 北海道大学, 保健科学研究院, 准教授 (50781267)
松山 成男 東北大学, 工学研究科, 教授 (70219525)
赤松 憲 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学研究所, チームリーダー (70360401)
甲斐 健師 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究主幹 (70403037)
楠本 多聞 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学研究所 計測・線量評価部, 主任研究員 (90825499)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | DNA損傷予測モデル / 化学モデル / 一本鎖切断 / 二本鎖切断 / クラスター損傷 / 高LET放射線 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、DNA損傷を高速に推定可能なDNA損傷予測システムの開発に向けて、(1)化学モデルの開発、(2)イオン線照射実験の準備、(3)光子線や炭素線照射後のDNA損傷測定データの蓄積を進めた。開発や測定を進める中で得られた成果の一部は、国際的に著名なジャーナルにて3報の発表を行った。 当該年度の化学モデルの開発においては、既存の放射線輸送計算コードPHITSに実装されているイオン飛跡構造解析モードKURBUCを応用し、陽子線照射後のDNA損傷収率の計算を行うことで、高LET照射時の化学過程の重要性を確認した。同時に、当初予定していなかったが、PHITSによる計算から得られる相互作用の空間情報から、ラジカルの初期収量と時間変化を計算するコード開発に成功し、DNA損傷の発生メカニズムに関する研究を一層進めている。このコード開発に基づき、DNA損傷予測を高精度に再現する化学モデルの開発に着手した。 次に、当該年度の照射実験の準備については、東北大学高速中性子実験室の陽子ビームと中性子線の物理特性の評価を進めた。同時に、高崎量子応用研究所に設置されている低エネルギー炭素イオン源(TIARA)を使用した照射実験を行い、原子間力顕微鏡を使用することで、25 MeV/nおよび10 MeV/n炭素線(高LETイオン線)照射後に発生する様々なDNA損傷(一本鎖切断、二本鎖切断、クラスター損傷)収量の定量的測定に成功した。現在、得られた実測値に基づき、開発中の化学モデルの妥当性の確認を進めている。 以上の化学モデル開発ならびにイオン線照射実験の蓄積から、高LET放射線後の化学過程の重要性が確認され、化学モデル開発の開発ならびに検証を大いに進展させることに成功した。したがって、様々な放射線タイプにより生じるDNA損傷を高速に推定可能なDNA損傷予測システムの開発に向けて大幅に研究が進展したと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和4年度の進捗状況において、既存の物理過程のみを考慮したDNA損傷予測モデルを陽子線照射後のDNA損傷予測に応用し、化学過程の重要性を確認し、化学モデルの開発につなげた。また、当初の研究計画にはなかった化学過程の詳細な計算コードの開発成功に発展させ、化学過程メカニズムを一層考慮してDNA損傷予測を高速に実現する化学モデルの開発を展開した。さらに、高LET放射線である低エネルギー炭素線により発生する様々なタイプのDNA損傷の測定にも成功し、測定データの蓄積も極めて順調である。これら成果は、国際的に著名な論文として報告を行うことにも成功した。以上のとおり、当該年度に計画していた研究内容に加え、令和5年度実施予定の研究準備も令和4年度で進めることに成功したため、当初の計画以上に研究が進展したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、上記の令和4年度の研究開発状況を踏まえて、下記3点の研究内容について着手する予定である。 (1)令和4年度に開発した陽子線用のDNA損傷予測モデルならびに化学過程計算コードを、原子力機構が主となり開発を進める放射線影響解析コードPHITSへ実装し、世界中の約8000名のPHITSユーザーに配布することで社会還元を進める。 (2)DNA損傷の高速予測の実現へ向けて、化学モデルの開発を一層進めると同時に、DNA損傷を引き起こす可能性の高いラジカル種(OHラジカル等)の測定値との比較から、開発したモデルの妥当性を検討する。 (3)DNA損傷に関する科学データの蓄積を継続する。具体的には、酸素濃度を変化させた場合やラジカルスカベンジャーを加えた実測を行い、高LET放射線によるDNA損傷収量の測定し、測定したDNA損傷データと(1)や(2)で得られたDNA損傷の予測結果と比較することで、DNA損傷予測システムの開発を加速させる。 以上のとおり、当初予定していた、化学モデル開発やDNA損傷測定データの蓄積を実施し、「様々な放射線タイプにより生じるDNA損傷を高速に推定可能なDNA損傷予測システムの開発」を一層進める予定である。
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Research Products
(6 results)