2022 Fiscal Year Annual Research Report
DNA損傷が自然免疫を惹起する多階層の分子機構の解明
Project/Area Number |
22H03748
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
佐々 彰 千葉大学, 大学院理学研究院, 准教授 (10738347)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ゲノム不安定性 / DNA損傷 / エピジェネティクス / 自然免疫 / DNA修復 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゲノムDNA損傷を修復する仕組みの機能不全は、がんや先天性疾患の原因となる。DNA修復の欠損は自然免疫応答を介して細胞老化や細胞死を引き起こし、その仕組みは傷ついた自己DNA断片に起因するDNA損傷応答として理解されてきた。本研究では、DNA修復酵素RNase H2を欠損して恒常的にDNA損傷が蓄積するヒトTK6細胞株をもとに、如何なる経路でDNA鎖切断ならびにゲノム変異が誘発され、その結果として自然免疫応答に至るのかを同定することを目的とした。 第一に、RNase H2欠損下で働く代替的DNA修復機構の生理学的意義を解析した。具体的には、RNase H2欠損下でDNA損傷修復に関与すると予想されるTDP1を欠損させた多重変異株を樹立し、コロニー形成試験による細胞の生存率の定量、TK遺伝子突然変異試験と小核試験によるゲノム不安定性の解析を行った。その結果、RNase H2とTDP1を二重欠損した細胞株は、RNase H2欠損株と比べてTK突然変異頻度・小核形成頻度の低下と共に、細胞生存率もまた顕著に低下した。これらの結果から、TDP1を介した代替修復経路は突然変異を誘発する一方で、細胞の生存に重要な役割を果たすことが示唆された。 第二に、TK6株におけるエピジェネティックなゲノム変化を可視化する方法として、ATAC-seqの至適実験条件を確立した。次世代シーケンサーによる解析の結果、TK6におけるオープンクロマチン領域の可視化に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RNase H2欠損下で働く代替的修復機構の意義を明らかにすると共に、TK6株におけるエピジェネティックな解析手法としてATAC-seqの至適条件を決定した。以上から、研究計画はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ATAC-seqを安定的に稼働させるためのTn5トランスポゼースの大量発現・精製を行う。また、RNase H2欠損下で自然免疫応答が活性化される仕組みの解明に向けて、免疫応答を担うパターン認識受容体を欠損した細胞株の樹立を行う。
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