2023 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of mechanisms of generational toxicology of developmental neurotoxicity - Developmental program and epigenomic toxicity of pesticides
Project/Area Number |
22H03750
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
星 信彦 神戸大学, 農学研究科, 教授 (10209223)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 俊史 神戸大学, 農学研究科, 助教 (10380156)
池中 良徳 北海道大学, One Healthリサーチセンター, 教授 (40543509)
平野 哲史 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 助教 (70804590)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 農薬 / 継世代影響 / 発達神経毒性 / エピゲノム毒性 / ネオニコチノイド系農薬 / 海馬依存性空間記憶 / 小脳運動学習機能 / モノアミン |
Outline of Annual Research Achievements |
母獣マウス(C57BL/6N)に対して,農薬評価書における無毒性量を参考に,CLOを65 mg/kg/dayの濃度で妊娠1日目から離乳(3週齢)まで曝露した.子(F1),孫(F2),ひ孫(F3)世代の成年期(10-11週齢)に新奇位置認識試験(NLR),ロータロッド試験(RR)を実施し,海馬依存性空間記憶および小脳運動学習機能を評価した.試験後に血液・脳を採取し,LC-ESI/MS/MS法を用いて,ストレスの指標であるコルチコステロンとモノアミン類を定量した.また,RR実施後の小脳を遺伝子発現解析に供した.行動試験の結果,対照群と比較してF1・F2世代では海馬記憶が低下したが,F3世代では変化がなかった.一方,小脳運動学習機能についてはF1・F2世代で影響がなかったが,F3世代では低下が認められた.すなわち,海馬ではF2世代まで影響が残るが,F3世代で減少すること,小脳ではF3世代で影響が現れる可能性の高いことがあきらかとなった.モノアミン測定の結果,NLR後のF2世代では,海馬および線条体において記憶形成に重要なドーパミンとその代謝物が高値をとり,ドーパミン調節不全による海馬記憶の低下が示唆された.RR後はすべての世代で,脳または血漿中のトリプタミンが低値であった.加えて,その代謝物のセロトニンが高値であり,ストレス応答に関わるセロトニン経路の活性化が示唆された.F3世代では,ストレス応答の遅れにより,運動機能が低下した可能性がある.遺伝子解析の結果は,今回の行動試験結果を補填するものではなかったが,F1世代では2つの遺伝子(Fgfr1,Syne1)に僅かな発現変動のあることを示唆している.以上より,胎子・授乳期無毒性量CLO曝露により,モノアミン変動を伴う海馬記憶への顕著な継世代影響が初めて明らかとなり,F3世代への小脳運動学習機能の低下の可能性が明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通り,「なぜ継世代影響が起こるのか,そのメカニズムを科学的に明らかにする」事を目的に,農薬の事例としてネオニコチノイド系農薬のクロチアニジン(CLO)を胎子・新生子期に無毒性量のCLOを曝露させ,子(F1),孫(F2),ひ孫(F3)世代の成年期(10-11週齢)に新奇位置認識試験(NLR),ロータロッド試験(RR)を実施し,1) 海馬依存性空間記憶および2) 小脳運動学習機能を検証することができた.その結果,胎子・授乳期無毒性量CLO曝露により,モノアミン変動を伴う海馬記憶への顕著な継世代影響が初めて明らにすることができ,ストレス応答に関わるセロトニン経路の活性化が示唆された.F1世代での遺伝子発現変動やF3世代では,ストレス応答の遅れにより,運動機能が低下した可能性を世界で初めて明らかにすることができた.その結果,7報の論文が受理・掲載された.
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Strategy for Future Research Activity |
浸透性農薬FPN(フィプロニル)は,農薬,ペットのノミ・ダニや室内のアリやゴキブリの駆除剤として使用されているフェニルピラゾール系の殺虫剤である.FPNは昆虫においてはGABA受容体への結合を阻害し,神経の過剰興奮を引き起こすが,γ-アミノ酪酸(GABA)受容体への親和性には選択性のあることから,哺乳類に対しては安全とされてきた.GABAは,中枢神経系に広く分布する抑制性伝達物質であり,GABA受容体に結合し,様々なシグナル伝達を調節する.神経細胞のGABA受容体への結合は,興奮を抑制し,精神を安定させる作用がある[Fujibayashi et al., 2008].しかし現在,マウスやラットへの神経毒性,肝毒性,生殖毒性,内分泌機能攪乱[De Oliveira et al., 2012; Leghait et al., 2009; Ohi et al., 2004]などが次々と報告されており,FPNのヒトを含む哺乳類への安全性について懸念が高まっている.さらに,FPNは体内では主にスルホン体のフィプロニルスルホン(FPNS)に変換される.FPNSはFPNと同様にGABA受容体を攪乱するが,FPNSの方がはるかに長く体内に滞留し,脳のGABA受容体に対する親和性も大きいことが示唆されている[Suzuki et al., 2021, Zhao et al., 2005].近年,農薬使用量増加に伴い,自閉症スペクトラム障害,注意欠陥・多動性障害(AD・HD),学習障害を示す子どもが急増しており,それらには相関関係があることが証明されている[Roberts et al., 2019].しかし,これらの事例はネオニコチノイド系農薬によるものが多く,FPNに関する研究報告は少ない.最終年度では,FPNにも着目し,胎子期,新生子期のFPN曝露による継世代発達神経毒性を検証する.
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Research Products
(15 results)
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[Presentation] Sperm miRNA changes and next generation effects due to paternal exposure to neonicotinoid pesticides2023
Author(s)
Makiko Ito, Sarika Nunobiki, Ayano Yoshimoto, Yukako Hara, Yuya Ishida, Sakura Yonoichi, Yohei Mantani, Toshifumi Yokoyama, Tetsushi Hirano, Yoshinori Ikenaka, Nobuhiko Hoshi
Organizer
7th Chemical Hazard Symposium
Int'l Joint Research
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[Presentation] Transgenerational effects of maternal behavior induced by exposure to neonicotinoid pesticide2023
Author(s)
Sarika Nunobiki, Ayano Yoshimoto, Makiko Ito, Sakura Yonoichi, Yukako Hara, Yuya Ishida, Yohei Mantani, Toshifumi Yokoyama, Tetsushi Hirano, Yoshinori Ikenaka, Nobuhiko Hoshi
Organizer
7th Chemical Hazard Symposium
Int'l Joint Research
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[Presentation] Developmental neurotoxicity of fipronil2023
Author(s)
Ayano Yoshimoto, Makiko Ito, Sarika Nunobiki, Yukako Hara, Yuya Ishida, Sakura Yonoichi, Yohei Mantani, Toshifumi Yokoyama, Tetsushi Hirano, Yoshinori Ikenaka, Nobuhiko Hoshi
Organizer
7th Chemical Hazard Symposium
Int'l Joint Research
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