2022 Fiscal Year Annual Research Report
Proposal of energy policy evaluation integrating gameplays by AI and human players
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22H03807
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鈴木 研悟 筑波大学, システム情報系, 助教 (50634169)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本城 慶多 埼玉県環境科学国際センター, 温暖化対策担当, 主任 (30770622)
澁谷 長史 筑波大学, システム情報系, 准教授 (90582776)
大沼 進 北海道大学, 文学研究院, 教授 (80301860)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | エネルギー政策 / エージェントベースシミュレーション / ゲーミング / 心理学実験 / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度の主な研究内容は、資源経済ゲームの開発と実践を通じた評価手法の確立であった。主要な成果は以下の通りである。 (1) 実験:炭素税がエネルギー技術選択に与える影響を、人間がゲームをプレイするオンライン実験によって調べた。参加者は、化石燃料または非化石エネルギーから最終エネルギーを生産するエネルギー事業者となり、自身の利益最大化を目指す。ゲームは化石燃料への課税の有無が異なる2条件で行われた。実験の結果、実際の課税がエネルギー選択を変える一方、事前の課税情報が将来の不確実性に対する事業者の不安を解消できず、行動変容にもつながらないことが示唆された。 (2) ABS:AIが(1)と同じゲームを同条件でプレイするABSを行った。1体のエージェントが市場全体のエネルギーミックスを決める条件と、複数のエージェントの相互作用によって市場全体のエネルギーミックスが決まる条件のシミュレーション結果を比べ、エージェントの相互作用が市場全体のエネルギー選択に与える影響を調べた。その結果、エージェント間の市場競争がエネルギー転換を妨げること、炭素税が競争の影響で消費者価格に転嫁されづらいことが示唆された。 (3) 電源選択ゲームと寒冷都市ゲームの開発 卸電力市場における売り手(発電事業者)と買い手(小売事業者)のオークションを表現するゲームを開発し、AIプレイヤーによるシミュレーション環境を構築した。現状、1か月間の電力取引をシミュレートできる段階である。寒冷都市ゲームは、ゲームの前段階となる最適化モデルが完成した。 以上の成果を、国内外の会議発表、フィンランド・オウル大学の専門家との情報意見交換、ならびに英文誌への論文掲載を通じて公表し、次年度以降の方針を決めるのに有用な知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) 資源経済ゲームの開発と実践:人間による実験とAIによるシミュレーションを実施済みであり、順調に進んでいる。研究期間開始前から、COVID-19による行動制限への対応として実験環境のオンライン化を進めてきたため、本研究においてもスムーズに実験を進めることができた。AIによるシミュレーションについても、強化学習を用いるエージェントシミュレーション自体は新しい試みであったものの、行動科学と機械学習双方の専門家がモデルの開発と検証に参加することで、仕様通りに動作するモデルを完成させることができた。 (2) 電源選択ゲームの開発:電源選択ゲームについては、2022年度は助走期間と位置付けていたものの、1か月間の電力取引をシミュレートできる状態まで仕上げつつ、結果の妥当性もある程度検証できた。年度内に2件の研究発表を行うことができたため、順調に進んだと言える。 (3) 寒冷都市ゲームの開発:寒冷都市ゲームについては、計画通りに最適化モデルを完成させることができ、分析結果を対外的に発表できたことから、おおむね順調に進んだと考えている。 以上の成果を、国内外の会議発表、フィンランド・オウル大学の専門家との情報意見交換、ならびに英文誌への論文掲載を通じて公表し、次年度以降の方針を決めるのに有用な知見を得た。 (4)自治体再編ゲーム:地域エネルギー供給の観点から市町村の統合を模索する自治体再編ゲームの開発を考えていたが、研究手法を全体的に見直し、抽象度の高い数理モデルを解析的に解く理論的アプローチではなく、具体的な技術システムを想定したより複雑な数理モデルを構築する必要が生じた。この計画変更のためにやや遅れている。 以上のように一部のテーマで遅れが発生しているものの、おおむね順調に推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 資源経済ゲームにおける実験とABSの比較分析:前年度に実施した実験とABSの結果をそれぞれ分析する。両者の統合的な分析を通じて、これまで規範的にしか議論されてこなかった2つの手法の役割分担について、実証的な観点から示唆を導く。 (2) 卸電力市場のシミュレーション:卸電力市場を模擬する電源選択ゲームの開発に着手しており、自律的に行動する機械エージェント同士が電力オークションを行うABSを構築済である。今年度は1年間程度の長期的なシミュレーションを可能にすること、ならびに実社会における電源選択と約定価格変動をある程度再現できることを目指す。これにより、短期的な市場価格変動が長期的な電源建設に与える影響を調べる基盤、ならびに人間が参加する実験環境の基盤を構築する。 (3) 寒冷都市ゲームの開発:寒冷都市における需要家の技術選択を模擬する多主体系モデルにつき、モデルの最適解を求める数理計画モデルを構築済である。今年度は、各需要家の系全体に対する貢献度を定量化する手法を検討しつつ、多主体系としての解を求めるABSを構築する。なお、別テーマと考えていた自治体再編ゲームの観点も、この寒冷都市ゲームに取り入れて一体化することを検討する。 (4) 人間らしく行動する機械エージェントのデザイン:これまで強化学習を用いる機械エージェントを開発してきたが、一部テーマにおいて学習がうまくいかない問題が起きている。そこで、人間がプレイしたゲームの結果を学習する機械エージェントのデザインを新たに検討する。
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