2022 Fiscal Year Annual Research Report
自然を基盤とする解決策(NbS)としてのグリーンインフラ活用治水の経済学的研究
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22H03814
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大沼 あゆみ 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (60203874)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 謙太郎 九州大学, エネルギー研究教育機構, 教授 (30344097)
柘植 隆宏 上智大学, 地球環境学研究科, 教授 (70363778)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | グリーンインフラ / NbS / 防災・減災 / 不確実性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、自然を活用した防災インフラであるグリーンインフラの特徴を考察した研究を行った。一つは、グリーンインフラの「不確実性」に注目した研究である。従来の防災インフラである人工物の防波堤などが、ある規模のハザードまでは「確実に」防御してくれる一方で、グリーンインフラでは防御に不確実性が避けられない。そこで、市民を対象に選択型実験を行い、不確実性を評価した。その結果、防御の成功率が非常に高いほど不確実性回避することの評価が小さくなるという、結果が得られた。これは、防御率が完全でなくとも、ある程度高い状況においては不確実性を許容すると解釈され、グリーンインフラ設置の際の合意形成にとって有用な性質となる。この結果は、英文学術誌に掲載された。 また、グリーンインフラが促進されてきた背景をイギリスを対象に調査した研究を行った。イギリスにおいては、防災・減災手段としてグリーンインフラの活用を積極的に進めている.洪水や海岸侵食を自然プロセスの活用により解決する手段は「自然プロセスとの連携」(WWNP: Working with Natural Processes)と呼ばれている。これはNbS(自然を活用した解決策)と同じ意味で使われている。このような背景に、環境便益も含めた費用便益分析を徹底して行っていること、また、グリーンインフラの不確実性やリスクについて、学術的知見をベースにして、市民にできる限り正確な情報を伝えていることが示された。この研究は和文学術誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グリーンインフラを政策的に推進するうえで必要な知見である不確実性に対する評価と、グリーンインフラ導入の先進国であるイギリスでの動向を調べ客観的に評価することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
理論研究を推進し、上流と下流の経済モデルを構築する。また、一方で、コロナ禍で農家の調査は遅れているが、より遂行可能な計画を検討し、農家の意識について研究を実施する。さらに、イギリスでの調査を進展させ、より包括的な政策研究を実行する。
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