2022 Fiscal Year Annual Research Report
タンザニア半乾燥地域における混交林の形成と持続的な利用に関する実証的研究
Project/Area Number |
22H03824
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊谷 樹一 京都大学, アフリカ地域研究資料センター, 教授 (20232382)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 史 弘前大学, 人文社会科学部, 准教授 (20512239)
黒崎 龍悟 高崎経済大学, 経済学部, 准教授 (90512236)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | センダン科 / 外来樹 / 混交林 / 植林 / 材木市場 / 家具材 / 放牧 / 食害 |
Outline of Annual Research Achievements |
タンザニアの半乾燥地域における生態環境の劣化は農村経済の停滞と深く関係している。長年の研究から、わたしたちはこうした地域に循環的な林業を生業システムに組み込むことで、経済基盤の確立と環境の修復・保全の両立を実現できると考えている。アフリカの半乾燥地域において生態環境や消費者のニーズに適した樹種を見つけ出すのは容易でなかったが、広範の調査によって当該地域の条件にあった樹種を見つけることができた。この樹木はドイツ植民地期に導入されたセンダン科のToona ciliata(以下、トーナ)で、生長が早く、軽軟で丈夫なため家具材や建材に活用できる。この有用樹は1世紀にわたってタンザニア各地で利用されてきた。しかし、おもに自家消費が目的で植栽されてきたことや、家畜の食害を受けやすいなどの理由で大規模には植林されず、安定した市場は形成されてこなかった。そのため、商業用の植林が村社会内部にどのような影響をおよぼすかはわかっていない。この研究では、2018/2019年に栽植した植林地を利用して、植林によって顕在化する社会内部の課題、軋轢、矛盾を把握し、植林の課題を生態と社会経済の観点から総合的に把握することを目的としている。 植林地を持続的に利用・保全するために、住民にとって多様(物質的、経済的、生態的)な価値を有する混交林の形成こそが持続性を有した林業として地域の基幹的な生業になりうると考え、上記のトーナの植林地のなかに在来有用樹を混植した。それは、植林するうえで最大の課題となる家畜による食害の軽減をも意図している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
混交林の形成を目的として、乾季のあいだに在来樹の種子を採集してトーナ植林地に混植した。しかしながら、種子の発芽率が低く、発芽した苗も生長が遅かったためトーナを覆い隠すことができず、植林地は家畜を除けるための金網で囲うことにした。在来樹の生垣ができたら別の場所に移動して植林地を拡大するつもりにしていたが、生垣が小さかったためフェンスを移動することができなかった。また、2021年/2022年の雨季は厳しい干ばつに見舞われた。ここでは2010年頃からブタを放し飼いするようになり、多年生の作物であるキャッサバやバナナが食害によって栽培できない状態にあった。そのため、トウモロコシの凶作は深刻な食料不足を意味していた。わたしたちと一緒に植林に取り組んでいた村人たちも例外ではなかった。フェンスに囲まれた植林地にはトーナが枯れて欠株になっている場所も多く、彼らはそういう場所でキャッサバを栽培したいと申し出てきた。2022年の雨季には、欠株の場所に補植するつもりでいたが、キャッサバの栽培を優先し、補植はその収穫を待つことにした。 8月の調査中に当該村においてウシとブタの病気が確認された。この地域はウシの感染症である牛肺疫(CBPP)とアフリカ豚熱(ASF)の常在地で、過去10年間にも2回ずつのアウトブレイクを経験して大きな被害を出している。私たちは家畜食害に関する調査を取りやめ、後発チームの調査も延期することにした。 こうした天候不順や家畜感染症の発症によって予定していた調査を実施できず、全体としてやや遅れ気味である。
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Strategy for Future Research Activity |
植林した樹木の生育は順調であるので引き続き植林地の拡大と植林地の多目的利用に関するアクションリサーチを実施する。とくに樹木を植えてから収穫までに要する期間の収入もしくは食料生産は大きな課題であるが、前年度の干ばつ年に偶然知った樹間におけるキャッサバ栽培は有効な方策であり、さらに検証する意義はあると考える。また、牧畜民による林間放牧が盛んになり、牧草不足が顕在化している。植林地での牧草栽培の可能性も検討すしてみる必要がある。 2022年度は家畜による食害に関する調査が実施できなかったので、翌年度は畜産学者(ブタ、ウシ)を派遣して予定の遅れを取り戻す。
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Research Products
(12 results)