2023 Fiscal Year Annual Research Report
Comparative Study on Solar Pump Irrigation Systems in South Asia: Evaluating Efficiency, Income Distribution and Environmental Impacts
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22H03836
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
藤田 幸一 青山学院大学, 国際政治経済学部, 教授 (80272441)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉江 あい 京都大学, 文学研究科, 講師 (10786023)
加治佐 敬 京都大学, 農学研究科, 教授 (50377131)
石坂 貴美 関東学院大学, 経済学部, 准教授 (60804606)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | ソーラー灌漑ポンプ / プロジェクト評価 / バングラデシュ / インド東部 / 比較制度分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、まず8月に代表者・分担者全員でバングラデシュに渡航し、ボグラとクシュティアの2ヵ所の農村地域を再訪し、ソーラー灌漑にかんする調査を可能な限り行い、さらにマッピングとそれに関連する情報収集(ソーラーポンプと他の灌漑施設の位置および灌漑区域の地図上の特定化と灌漑境界域にある圃場での農業経営情報の収集)のための準備作業を完了した。10月には藤田と石坂でバングラデシュを再訪し、IDCOL管轄外にあるNGO(DASCOH)のプロジェクト村で今後の本格的調査のための準備作業を行った。また、その後、2つの農村地域でのマッピングほかの調査委託契約と、DASCOHプロジェクト村での第一次調査の調査委託契約を結び、それぞれ期限までにデータ収集を終え、さらにその後、ある程度のデータ分析を終えた。 これまでの調査から判明したことの要点は、次の通りである。1)ソーラーポンプの灌漑面積が伸び悩み、あるいは他の灌漑施設に奪われるなどの問題が生じており、投資収益性が低く、施設を所有する民間企業やNGOが水利料の値上げや極端な場合は施設を売却する行動に出ていること、2)その背景には、他の灌漑施設(ディーゼルSTWや電動STW)の所有者の抵抗あるいは他の灌漑施設との競争に敗れているという事態があること、3)そういう事態は稲作よりも野菜作など、より付加価値が高く、また頻繁かつ適時の灌漑が必要な作物で起こっていること、がわかった。 2023年12月には京都大学にて研究会を開催し、これまでの調査結果を整理して議論し、今後の課題を共有する作業を行った。 他方、2024年2月、比較制度研究を進めるため、インド・西ベンガル州で予備的調査を行った。そこでも仲介組織が重要であること、付加価値の高い内水面養殖漁業へのソーラーポンプの水利用が多く見られるなど、興味深い論点が浮かび上がった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ソーラー灌漑を管轄する政府組織IDCOLの調査協力が得られず、調査研究戦略の大幅見直しを余儀なくされ、2つの農村でのマッピングほかの作業を完了し、またIDCOL管轄外にあるNGO(DASCOH)のプロジェクト村での第一次調査(2つの集落の全世帯調査)を終えた。2023年12月には京都大学で研究会を開催し、これまでの調査結果を整理して議論し、今後の課題を共有する作業を行った。 これまでの調査から、1)ソーラーポンプの灌漑面積が伸び悩み、ないし他の灌漑施設に奪われるなどの問題が生じており、投資収益性が低く、施設を所有する民間企業やNGOが水利料の値上げや極端な場合は施設を売却する行動に出ていること、2)その背景には、他の灌漑施設(ディーゼルSTWや電動STW)の所有者の抵抗あるいは他の灌漑施設との競争に敗れているという事態があること、3)そういう事態は稲作よりも野菜作などより付加価値が高く、また頻繁かつ適時の灌漑が必要な作物で起こっていること、が判明した。 またインド・西ベンガル州で予備的調査を行い、そこでも仲介組織が重要であること、付加価値の高い内水面養殖漁業へのソーラーポンプの水利用が多く見られるなど、興味深い論点が浮かび上がった。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、これまでの進捗を前提にして、主に以下の作業を行っていく。1)マッピングの結果を分析し、必要であればさらなる調査を行う。2)DASCOHプロジェクト村での第一次調査の結果をまとめ、さらに第二次調査(2つの集落のSTW所有者全員を対象にした灌漑農業経営行動の詳細な実態調査)を実施し、上がってきたデータを分析する。 DASCOHプロジェクト村での第二次調査とその分析は、1つの村の事例に限定されるとはいえ、本研究プロジェクトの大きな目的であるソーラー灌漑の効率性、分配、環境問題へのインパクトが明らかになってくる1つの山場となるであろう。なるべく早く分析を進め、できれば2024年度内にやや大掛かりな研究会を組織・開催する予定である。
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